シネトーク135『悪の教典』２●三池映画は今の日本映画にとって“必要悪”である

山田孝之の情けない最期が最高すぎる！

てるお　「二階堂ふみは前髪パッツンにしてもやっぱカワイイのお。　宮崎あおいをちょっとツンデレにした感じで」

たくお　「でも彼女はもっと頑張れたと思う。意外と見せ場が少なかったし」

てるお　「確かに『ヒミズ』に比べたら彼女は全然追い込まれてないよな。まだまだ余裕あります！って感じ」

たくお　「ラストで彼女の片目が白内障のようになってた場面はどういう意味なの？」

てるお　「アレは２羽いたカラスの１匹の片目が白内障だったでしょ？　そのカラスも蓮実に仲間を殺され、彼に復讐の機会を狙っている暗示が隠されている。なので続編では、二階堂ふみが蓮実に復讐する話になるか、蓮実の後継者となって片腕マシンガールになる話らしい」　←全くのデタラメです

たくお　「女の子の気持ちになって演じたという林遣都クンのナヨナヨした感じが何気にリアルだったな。いい意味でキモイ」

てるお　「伊藤英明のイメチェンよりも林クンの変貌っぷりにショックを受けたファンも多いんじゃね？　男性教師とエッチしてる時の彼のイキ顔が脳裏から離れん」

たくお　「ゲイ教師、女子生徒に体を要求する不良教師、この学校って問題教師しかいないのな」

てるお　「ここの校長も教師の奥さんと不倫というね････。救いようがねえな、この学校は」

たくお　「吹越満のキモイ感じもイイよね。舌を出してブーーーッとやるとこが好き」

てるお　「彼の異常性は『～序章』で炸裂してるからね。ある意味、蓮実並みに狂ってる。本作を観て釣井先生が好きなった人は『～序章』を観てみてください。もっと好きになりますから」

たくお　「勇者ヨシヒコの粗暴な不良教師が何気に好き。性格は最悪なんだけど、何気にドラムが上手くて一部の生徒には慕われているって本当にそんな先生いそうだし」

てるお　「セクハラ相手の女子生徒の下着をクンクン嗅いで、ズドーン!!!　アレ、マジで最高！」

たくお　「僕もあそこは笑ったなあ。　あの演出は三池監督､グッジョブ！」

てるお　「結局、蓮実は最後に逮捕されるんだけど、急に踊り出して心神喪失を演じるあのずる賢さというか図太い神経には最後までイラつかせられる。原作の結末を変えてまでもヤツにはそれ以上の罰を与えてほしかった」

たくお　「というと？」

てるお　「例えば火だるまになりながら屋上から落ちて頭が割れて脳みそを飛び散らせて壮絶死を遂げるとかさ」

たくお　「いや、それはどうだろ。　僕はこの後味の悪い終わり方もいいと思ったけどね。三池監督は蓮実というキャラに惚れ込んでるし、最後の『To be continued』は、監督が貴志氏への続編小説のラブコールという意味でクレジットしたものらしい。原作では、その後の展開で彼が心神喪失を訴え社会復帰する可能性を示唆しているから、ジェイソンのようにしぶとく『蓮実リターンズ』は大いにあり得る」

てるお　「それか二階堂ふみが片腕マシンガールになるかだな」

たくお　「でも『告白』も後味悪い映画だったけど、やっぱり悪にはそれ相応の罰を与えているので、誰も幸せになっていない結末なのにある種のカタルシスがある。やっぱ映画はカタルシスが重要だと思った」

てるお　「だから俺はあの映画を高く評価してる。サイコ・サスペンスをエンタメ映画にするんだったら、そういうところもちゃんと計算してやってくれないと、やっぱり観てるほうとしては納得いかないわけよ」

たくお　「鑑賞後の“全く気持ちが晴れないイヤなものを観た”感はギャスパー・ノエ監督の『アレックス』 に近いかな、と思ったけど、よくよく考えたらそうじゃない。あれも本当に腹ただしくて理性を狂わせるキ○ガイ映画なんだけど、やっぱり“衝撃”という言葉が当てはまる作品なんだよ」

てるお　「衝撃というかトランス状態に陥るよな、アレ。１回観て頭がおかしくなりそうだったし、あれほど嫌悪感にまみれた映画はそんなにないぞ。でも『悪の教典』は観終わってもそんなに引きずらないし、『なんか胸糞悪い話だよねえ』だけで終わってしまう。人が見たくないところまでしっかり見せる『アレックス』に比べたら『悪の教典』はまだまだ甘い」

たくお　「AKB48の特別上映会で大島優子の『キライです』発言 がちょっと話題になったけど、そもそもなんでAKB48限定で上映会が開かれたの？　このイベントの企画意図がイマイチ分からんのだが」

てるお　「なんでも伊藤英明がAKBのシングルのミュージック・ビデオに英語教師役で出演した“縁”で企画されたらしい。でもそれだったら15歳以上の中高生限定の試写会をしたほうがもっと率直な意見が聞けたと思うけどな。別にAKBにする必要ないし。大島の発言効果で結果的にヒットしてるから東宝はしてやったりなんだろうけどさ」

たくお　「大島を擁護する派と、仕事でのキライ発言は大人げないと否定的な意見にぱっくり分かれたね」

てるお　「別にいいんじゃね、好き嫌いがあっても。映画ってそんなもんだし。他のメンバーは当たり障りのないコメントしかしてなかったけど、『キライです』とキッパリと斬った大島のコメントの方が潔いと思った。でも一連の騒動にもし“台本”があったら俺は許さないけど」

たくお　「僕は監督が安易にAKBメンバーを生徒役に起用しなかったことは評価したい」

てるお　「しかし『ファイナル・デッドブリッジ』がR-18なのに本作はR-15 なんだよね。映倫の基準ってなんかおかしくね？　明らかに倫理的に許されないのは本作の方でしょ？」

たくお　「倫理的、道徳的に見るんじゃなくて、直接的な残酷描写や暴力描写で判断してるからね。肉体損壊といったグロ描写が多いと必然的にR-18になる」

てるお　「『ファイナル・デッドブリッジ』なんかもうコメディじゃん。でも『悪の教典』はヘンタイ教師もわんさか出てくるし、教育上好ましくないだろ？　両作を観てどっちがトラウマになるかって言われたらこっちじゃね？」

たくお　「その人が映画を観てトラウマになるかどうかなんて映倫に判断できませんから」

てるお　「本当ならこういう胸糞悪い映画の満足度料金は俺としてはゼロにしたいところなんだけど、でも後半の地獄絵図をちゃんと映像化して見せた三池演出と伊藤クンの頑張りは買ってるので、まあ･････700円かな」

たくお　「観る価値のない駄作とは言わない。とりあえず観ておいてもいいんじゃない？　オススメはしないけど。ただし映画を理性的、常識的に観る人には正直､向かない」

てるお　「人によっては、生半可にこういう映画を観に行くとドエライことになります。先に『バトル・ロワイアル』『アレックス』あたりで暴力映画に免疫付けておくのもいいかも」

たくお　「賛否両論あって当然。そういう意味では、すっかりシマリのなくなった甘ちょろい今の日本映画に三池映画は“必要悪”なんだと思う」

てるお　「それは言える。たまにハッとする会心作を撮ってくれるから三池崇史はやっぱり侮れない。とはいえ、『ゼブラーマン２』『忍たま乱太郎』『逆転裁判』とか、どうしようもない愚作も多いので100％信頼してないけど。引っ張りだこの人気監督だけど、もうちょっと仕事を選んでほしいな」

たくお　「確かに」

ココGOOD！　三池監督の抜かりない暴力演出／伊藤英明の勇気あるイメチェン／伊藤英明の美尻（笑）／『Mack The Knife』は効果的／美術セット／２羽のカラス／前髪パッツンの二階堂ふみ／林遣都のナヨナヨ感／山田孝之の最期／吹越満のブーーーッ
ココBOMB！　やっぱり胸糞悪いストーリー／サイコパスと快楽殺人の線引きが曖昧／蓮実の行動心理が今ひとつ分からない／蓮実の殺人計画が偶然に頼りすぎで稚拙。ゆえにサスペンスとして盛り上がらない／殺しのバリエーションが少ないので単調／生徒たちは逃げてるだけで芸がない／クライマックスでの狂気性、緊迫感が足りない／製作側の話題づくり的な企画意図／映倫