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シネトーク135『悪の教典』1●原作の地獄絵図をなぞっただけでは映画は面白くならない

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ブルーレイ&シネマ一直線



白い映画には愛を捧げ、そうでない映画には鉄槌を下す
てるおたくお

ぶっちゃけシネトーク


●今日のちょい気になることシネ言
「膨大な三池映画を全部観てる人っているの?」




シネトーク135
『悪の教典』





監督・脚本:三池崇史 原作:貴志祐介
出演:伊藤英明/二階堂ふみ/染谷将太/林遣都/浅香航大/水野絵梨奈/KENTA/山田孝之/平岳大/吹越満


2012年・東宝/129分/シネスコサイズ/東宝配給(2012年11月10日公開)



●作品解説
 貴志祐介のベストセラー小説を三池崇史監督が映画化した
衝撃のバイオレンス・エンタテインメント。
 生徒たちに慕われ、同僚の教師から一目置かれている高校教師、

蓮実聖司。しかし裏の顔は自身の目的のためなら殺人もいとわない
おぞましいサイコパスだった。学校や自分の障害となる存在を次々に

消し去っていく蓮実。しかし、生徒の1人に自分の素性を知られてしまい、
ついには生徒全員の殺害計画を実行に移す。





※ネタバレしてます! ご注意ください

※今回のシネトークは前後編に分かれています






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コレを映画化しようと思いついた映画関係者は恐らく“狂ってる”


てるお 「そりゃ元々の原作がそうだから!と言われちゃそれまでなんだけど、でも・・・・・やっぱ胸糞悪いよな、この映画。大島優子の意見に同意するわ。俺も『この映画嫌いです』むっ


たくお 「ま、賛否両論になるのは目に見えてたけどね。『バトル・ロワイアル』の公開時と似たような賛否的空気を感じた」


てるお 「ぶっちゃけ『シューティング・ゲームのやりすぎで現実と仮想の区別がつかなくなったバカが撃ちまくってるだけのような映画』にしか見えなかったんだがにひひ


たくお 「ただ、『殺しを正当化している』『監督の悪趣味映画』『主人公に感情がなさすぎ』『全く共感できない』と批判している人が多いけどさ、でもそういう映画だから。『羊たちの沈黙』を観て、『殺人鬼を肯定している』と批判してるようなもんでしょ」


てるお 「原作は一気に読ませるぐらいのクオリティはあったし、話題性が高くなるのは分かるけど、いかんせん話が思ったほど面白くない。サスペンスとしてもそれほど上出来とは思えないし、ツッコミ部分も多い。何より読んでてだんだん腹が立ってくるので、世間が評価しているほど俺は買ってない


たくお 「そうなの? 僕は原作読んでないから分からないけど」


てるお 「そもそも、あんな道徳も倫理もない原作を三池監督でなぜ映画化しようと思ったのか関係者(東宝)に聞きたいね。そしてこう言わせてもらいたい。『あんた、狂ってる』にひひ


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たくお 「三池監督十八番の殺しまくり映画だから大体どうなるか想像はできたけど、ま、ぬるま湯に浸かったようなテレビドラマなのか映画なのか分からないパッとしない日本映画の中で、良くも悪くも突き抜けたものはあった。一応、“映画”としてのカタチは保たれてたし」


てるお 「ま、こっちに比べたら『踊る大捜査線 THE FINAL』のほうがもっと理解しにくい映画だったよなにひひ


たくお 「本作も特にメッセージ性のある作品じゃないし、監督本人も『エンタテインメント映画だから』と割りきってるところがあるので、ただ刺激を求めたい人にはオススメなんじゃないの?」


てるお 「でも作り手側が問題作として話題になればそれでいいんじゃね?という安易な企画意図が見え隠れするんだよね。作品が嫌いというより作り手側の“話題づくり的”な狙いはなんかもうイヤ。しかも監督も『楽しんでくれればいいんじゃない?』と割とお気楽な事を言ってるので、余計タチが悪い」


たくお 「作り手こそがサイコパスなんだよ、きっとにひひ


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てるお 「そりゃ伊藤クンがターミネーター化して邪魔者を惨殺するだけのホラー映画、と広い目で観たらそんなに拒否ることもないんだけど、生徒に人気の教師が何の躊躇もなく殺しまくる様を見て、『うわー、面白かった!』とは言えないよな。こう見えて俺は倫理的かつ道徳的に生きてるつもりだからにひひ


たくお 「『処刑教室』 みたいに救いようのないワルガキどもを教師が制裁していくようなカタルシスは一切ない。まるで子犬のようになついていくる生徒たちを飼い主が無造作に殺しまくるんだから、そりゃ僕だってハラワタがえぐられる気持ちになるよ」


てるお 「劇場を出た後でも、ムカつきと何か得体の知らないモヤモヤした感じだけが残ってて、ずっと葛藤している。で、三池監督と東宝の思うツボになってる自分に気づき、そこに不快さも加わってくるむっ


たくお 「でも本作を観て『スカッとした』と言う人もいるんじゃない? 不謹慎だけど、現実世界では見られないものを見せるのが映画の醍醐味なわけだから


てるお 「見たくないものを見せられるのは醍醐味とは言わんだろ。『映画として面白かった』はまだ分かるけど、『スカッとした』はちょっとヤバイよ。そう思ってる人はすぐにカウンセラー受けてきた方がいい、異常だからにひひ


たくお 「生徒にいじめられてる先生が観たらスカッとするんじゃない?にひひ 人って、見ちゃいけないものを見たくなる本能ってどこかしらにあると思うんだよ。で、それを見て面白いと思ってしまった自分の道徳観に葛藤する。この映画もそこが狙いなのでは?」


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てるお 「ま、俺も人が何かに食べられるホラー映画は好きだもんなにひひ


たくお 「『ヘタに映画なんか観に行くとエライことになっちゃう、という映画があってもいい』とコメントしてた監督の意気込みは買ってもいいと思ったけど


てるお 「まあね。ハリウッドや韓国映画ではもっとヒドくてムカつかせる極悪非道な映画があるし。それに比べたら本作はまだまだ“お子様向け”なのかな」


たくお 「三池映画としても本作は生ぬるいほうだよ。『殺し屋1』のほうがまだ極悪性の高い作品だったし。ま、アレも話がヒドかったけど」 ※ちなみに『殺し屋1』は18禁映画


てるお 「『極道戦国志 不動』なんてランドセルを背負った小学生が銃を撃ったり、女がアソコから吹き矢で人を殺してたからねえ。倫理的にはあっちのほうが問題作だにひひ」 ※この映画も18禁だけど極道映画の傑作!


たくお 「伊藤クンのイメチェンは良かった。表と裏の顔をさらけ出す二面性キャラも悪くなかったし、ムダにヌードサービスもあったし。女性ファンはこれだけでお釣りがきちゃうんじゃない?」


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てるお 「見事な美尻 フェチ だったよね。撮影では人生で初めて前張りを経験し、懸垂シーンではモノがはみ出ちゃって大変だったらしいにひひ


たくお 「『海猿』4作目が公開されて4か月しか間がないのに、事務所もよくこんな真逆な役の仕事をOKしたな」


てるお 「もしこっちが先に公開されてたら、『海猿』はあんなにヒットしてなかっただろうな。『あんだけ人を殺しておいて何が人命救助だっ!』ってにひひ


たくお 「良くも悪くも“俳優としての新境地開拓”という意味では演じがいがあったと思うよ。目を見開いた彼のイッちゃってる演技はグッド!だった」


てるお 「でも彼は何を演じても基本的に二枚目なので、サイコキラーとしてのブッ飛んだ存在感があまり感じられなかったのが惜しまれる。もっと汚れキャラに徹しないと!


たくお 「ま、そこはナイスガイなサイコパスということでにひひ


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てるお 「蓮実は快楽殺人者ではないけど、サイコパスというわりにはしっかり社会に順応してるし、京大に入ってその後ハーバード大も出てるんだよね。そんなエリート街道まっしぐらなサイコパスっているのか?


たくお 「別に社会的順応性のない人とか大量殺人者=サイコパス じゃないから。むしろ高度な知識や学力を保有した頭のキレるサイコパスのほうが多いと言われてるぐらい。社会適格者でも極端に偏った考え方しかできないとか、共感性が全くないとか、口が達者で他人を引き込むのが上手いとか、極端な虚言癖をもちそのウソを信じてしまっているといった人格障害がサイコパス一歩手と言われている。決定的なのは、良心というものがなく、罪悪感が完全欠如した人はかなりヤバイ」 ※あくまでも一例であって必ずしもそうとは限らない


てるお 「なるほど、ほとんど俺に当てはまってるじゃん。口から出まかせは俺の十八番だし、他人から借りたシャーペンとか罪悪感なく自分のものにしちゃうところあるからなあにひひ


たくお 「そりゃエド・ゲイン のような見た目からイッちゃってるサイコパスだと、もはやモンスター級だけど、蓮実の場合は誠実で慕われている人気教師という仮面をかぶってる分、余計にタチが悪い。そりゃ感情移入なんかできるはずがないし、ムカついてくるのは当然なわけで。例えば犯人が蓮実じゃなくて、生徒からキモイとウザがられてる釣井先生だったらそんなに腹が立たないと思うよにひひ


てるお 「そうなんだよな。初めからキ○ガイな殺人鬼だったらもっと割りきった観方が出来るけど、前半は“イイ人”なので後味が悪い。それでも廃墟同然の家屋に住んでたり、廃車寸前のハイゼットに乗ってたりするところは既にサイコパス・オーラ、ビンビンなんだけどねにひひ


たくお 「蓮実がなぜこういう行動を起こしたのか心理的にもさっぱり見えてこない。その“読めない怖さ”は一定の効果をもたらしてた


てるお 「別に蓮実の動機や行動心理を事細かく描け、とは言わないけどさ。でも原作では凶行に至るまでの彼の動機や、殺す必要がなかった殺人への自戒といった感情的な部分を多少なりとも描いているのに、映画ではそれらがほとんど省かれてて狂気の部分しか取り上げていない。どんな胸糞悪い凶悪野郎でも、映画にするならキャラとしての魅せる部分がないとダメだと思うぞ


たくお 「だからアレでしょ、動機と言っても、ウソをついた子供がそのウソを隠すためにさらに大きなウソをつくみたいな。蓮実のやってることってまるで子供なんだよ。1人の生徒の不自然な死体を隠すならいっそのこと全員殺しちゃえばいい、という常人には理解できない浅はかな考えで解決しようとする」


てるお 「俺が一番気になったのは、蓮実がキレ者というわりには行動が大胆というか稚拙というか、要するにバカなんだよ。お前、そんな計画じゃ成功しないしすぐバレるだろ? みたいなにひひ


たくお 「それは僕も思った。にひひ これは原作でも指摘されてたことで、殺人の描写はけっこういい加減で偶然任せなところが多いんだよねえ


てるお 「吹越満演じる釣井を殺害する場面でも、いくら終電間際の電車内で乗客が少ないからって、なんでわざわざあんなところで殺す必要があるのか。いくら外傷が残りにくいブラックジャックで殴打したからって、吊り皮で首つりってどう見ても不審死だろ。なのに警察や学校は何の疑いもなく自殺で片付けてしまうのもリアリティなさすぎ


たくお 「ま、あそこは映画的見せ場として許してあげれば?にひひ 第一、リアリティを問うような映画じゃないし」


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てるお 「モンスターペアレントの父親を火事に見せかけて殺害するのも偶然に頼りすぎだしリスク高すぎでしょ」


たくお 「そもそも彼を殺す必要があったのかも疑問だし」


てるお 「で、山場となる校内大量殺戮シーンではいよいよ蓮実の殺害手段がガサツになっていき、サスペンスとしての面白味も減退していく。あちこちに盗聴器を仕掛けたり、『悪の教典 序章』 では生徒や教師の履歴、性格分析など詳細にデータベース化したりするほど、用意周到な人間が取る行動とは思えないほど行き当たりばったりなんだよね


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たくお 「真夜中にずっと散弾銃をブッ放し、生徒たちの悲鳴が止まないのに、ご近所さんに全く気づかれないナゾとかね。にひひ てか、あの高校、どこにあるんだ?


てるお 「蓮実は慎重で確実に相手を仕留めるジェイソンの殺しテクを見習うべきだなにひひ


たくお 「ジェイソンの場合は映画の最後で全部バレちゃうんだけどにひひ






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クライマックスが修羅場なのに修羅場感があまりないのはどーよ?


てるお 「前半はサイコ・サスペンスとして結構楽しめたけど、ラスト30分は散弾銃で撃ちまくってるだけなので単調すぎてだんだん飽きてくる


たくお 「殺しのバリエーションが少なすぎっ。ここもジェイソンを見習うとこだよなにひひ


てるお 「三池監督だからもっとエゲつないものを期待したんだけど、思ったほどグロくないのもガッカリだな。にひひ 阿鼻叫喚度はさほど高くない」


たくお 「何がもったいないかって、せっかく学園祭準備の夜の学校という魅力的な舞台を用意しておきながら、それらがまるで活かされていない演出。それこそ蓮実の殺害手段を色んな小道具を使って、もっと面白く見せることができたと思うシラー


てるお 「あるいは生徒たちが反撃するぐらいの見せ場を持ってこないとパンチ!


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たくお 「全くその通り。生徒たちもキャーキャーわめいて逃げてるだけなんで、芸がなさすぎ。エンタメ映画なんだから原作を改変してもっと映画的見せ場を盛り込むべきプンプン


てるお 「唯一、蓮実と互角に渡り合ったのがアーチェリーをやってる生徒だけって・・・・。あんだけ追い込まれたら普通、立ち向かうヤツとかもっといるだろ?」


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たくお 「例え蓮実に殺されたとしても、頭脳戦とかで生徒たちにも活躍の場を与えないと、ただの殺され損しか見えない」


てるお 「なんだろうな、学校内の限定空間を活かした演出がされてないから、観ててハラハラする感じがあまりしないんだよ。ぶっちゃけ逃げようと思えば簡単に逃げれたよな?」


たくお 「観客が生徒たちと一緒になってサイコ野郎から逃げるような気持ちにあおりまくる演出で見せないと、せっかくのクライマックスもあまり活きてこない。修羅場なのに修羅場感がないのはどーよ?むっ


てるお 「それこそ『悪魔のいけにえ』のクライマックスのような狂気性や絶望感、『寄生獣』で校内で寄生獣が生徒や教師を殺しまくるあの描写のような尋常ではない緊迫感がないとダメでしょダウン


たくお 「生徒たちにあまり追い込まれた感じがしないんだよね。殺されそうになっても本当に生に執着している人間は相手を殺めてでも生き延びようとするもの」


てるお 「一番バカだなあと思ったのが、蓮実がロープを伝って窓から侵入してくる場面。とっととロープを切るとか窓から突き落とすとかしろよ! 生徒側が態勢的に有利なのに誰もそうしようとしないし、しかもグズグズして誰もその場から逃げようとしない。そりゃお前ら、殺されてもしょうがないよなってにひひ


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たくお 「原作を読んでいる時はあまり感じなかったけど、やっぱり1人ずつ殺す場面を映像で見せられるとどうしても間延びしちゃうんだよね。原作の地獄絵図をなぞってるだけでは映画は面白くならないダウン


てるお 「しかもさ、蓮実は一度殺戮をやめて職員室でノンキに殺した生徒のリストを赤線で消してた場面があったでしょ。ああいう場面を途中に入れることで張りつめた空気が消えるんだよ。その間に逃げられたらどうするんだよ、とか余計な事を考えちゃうしさ」


たくお 「三池映画ってスキが多すぎるし、しかも急にヘンなテンポになることが多い。盛り上げるところを大して盛り上げてくれないとか、しょーもないギャグや下ネタを挟み込んでテンションを崩しちゃうとか。そこがまたすっげーイライラさせられるシラー


てるお 「蓮実が好んで聴いている『Mack The Knife』(マック・ザ・ナイフ)は曲のインパクトといい、あの使い方は効果的だったグッド!


たくお 「歌詞の不気味さも相まって作品イメージにピッタリ。それこそエンディングはEXILEの歌なんかより『マック・ザ・ナイフ』をもう1回流してほしかった


てるお 「美術セットもイイ仕事してたよ。ゲイ教師の住むマンション部屋の趣味の悪い装飾とかにひひ、文化祭のケバケバしい色使いも本作の異様なムードを引きたててた」


たくお 「蓮実が住む家屋のセットも退廃的な感じがよく出せてるよなあ~と思ったけど、アレは山梨県の山中にあったやつをそのまま使ってたのねにひひ




手シネトーク その2に続く





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