面白い映画には愛を捧げ、そうでない映画には鉄槌を下す
てるおとたくおの
ぶっちゃけシネトーク
●今日のちょい気になることシネ言
「泣いてる観客のCMが流れただけで観る気が失せてしまう」
シネトーク140
『フランケンウィニー』
(3D字幕版)
FRANKENWEENIE
監督・製作・原案:ティム・バートン 音楽:ダニー・エルフマン
声の出演:チャーリー・ターハン/キャサリン・オハラ/マーティン・ショート/マーティン・ランドー/アッティカス・シェイファー/ウィノナ・ライダー
2012年米/ウォルト・ディズニー/87分/ビスタサイズ/3D/ウォルト・ディズニー・ジャパン配給(2012年12月15日公開)
●作品解説
ティム・バートン監督が84年に製作した実写短編映画を
3Dのストップモーション・アニメでセルフリメイクした
ブラック・ファンタジー・コメディ。
発明と映画製作に夢中のヴィクター少年にはスパーキーという
1匹の愛犬がいた。しかしある日、スパーキーが車にはねられ
命を落としてしまう。すっかり元気をなくしたヴィクターだったが、
学校の授業で習った科学の実験をヒントにスパーキーを甦らせることを
思いつく。稲妻の強烈な電流を浴び、つぎはぎだらけになって
息を吹き返したスパーキーとヴィクターは喜びの再会を果たすのだが・・・・。
※ネタバレしてます! ご注意ください
町中てんやわんやのドタバタ騒動シーンで映画ファンの血が騒ぐ!
てるお 「ティム・バートン監督、おかえりーっ!ってな感じのバートンチック満載な作品だった」
たくお 「『アリス・イン・ワンダーランド』はビジュアル映画としては楽しめたけど、話は全然つまらなかったし、『ダーク・シャドウ』は『なんじゃこれ?』という言葉以外見つからない駄作だった。バートンの時代も終わりかと寂しくなったけど、ちゃんとカムバックしてくれたねえ」
てるお 「どんどん“独りよがり俳優”になっていくジョニー・デップと、内縁のカミさん(ヘレナ・ボナム=カーター)の呪縛から解き放たれたバートンってノビノビ&イキイキしてる感じ」
たくお 「バートンはもうこの2人とは組まないほうがいいよ」
てるお 「愛犬との思い出、古典モンスター&ホラー映画へのリスペクト、極端にデフォルメされた異様なキャラクターたち、他者と交われない異形なる者への愛・・・・・。バートン・エッセンスが凝縮されまくりなだけに、やっぱファンとしては期待しちゃうわけで」
たくお 「オリジナルの短編は、ウォルト・ディズニー・スタジオでアニメーターとして働いてた下積み時代のバートンが完成させたものの『ディズニーの作風にそぐわない』といった理由からオクラ入りされてしまった作品。人付き合いが苦手で同僚からも変人扱いされてたうえに、愛情たっぷりに作った短編が公開されず、結局、ディズニーを離れ、93年の『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』までディズニーとは仕事をすることがなかった」
てるお 「短編の時も本当は長編で作りたかったらしいけど。今回は満を持しての長編なのでバートンはハリキってる。久々に『ナイトメアー~』のBDを引っ張り出して短編を観直したけど、かなりオリジナルに忠実に作られてるよね」
たくお 「30分の短編が87分とほぼ3倍の長さになっても、中盤に見せ場を盛りこんでいる以外は作品的な印象はほとんど変わらない。ヴィクターがスパーキーを使って自主制作映画を家族に見せるオープニングから同じだったし」
てるお 「しかもその自主制作映画も3Dで撮ってるというね。時代設定はボカされてるけど、自主制作で3D映画を作るのって結構大変だぞ」
たくお 「スパーキーを失ったヴィクターが雨が降ってる外を窓からボーと眺めている・・・・と思いきや、お母さんが水やりをしてたというだまし演出も健在」
てるお 「スパーキーを埋めた墓だけちょっと小高い丘の上にある描写とか、甦ったスパーキーが水を飲むとつぎはぎ部分からピューッと噴き出す場面もリメイクされててちょいニンマリ」
たくお 「隣人の太ったおばさんが再び出てきてくれたのも嬉しかったなあ」
てるお 「スパーキーのデザインはどっかで見たことあるなあと思ってたけど、バートンが手掛けた『ファミリー・ドッグ』のデザインをほぼそのまま使ってるよね」
たくお 「バートンも参考にしたと言ってる。『ファミリー・ドッグ』
は93年に放送された全10話のアニメシリーズ。ブラッド・バードが監督、スピルバーグが製作総指揮を手掛けた『ワンワン騒動記』は『世にも不思議なアメージング・ストーリー 2ndシーズンDVD-BOX
』に収録されてるヨ」
てるお 「そのまま使ってるといえば『ナイトメアー・ビフォア・クリスマス』の狼男まんまなネズミのバケモンも出てきたけど」
たくお 「いたねー!」
てるお 「スパーキーは愛嬌たっぷりに描いているのに、猫のほうは露骨に愛情のない描き方だったよねえ。なんつーか、ほとんど生きてる感じがしないというか」
たくお 「しかもコウモリと合体してあんな救いようのない最期にしちゃうことなかろうに」
てるお 「だよなー。別にワルキャラでもなんでもないのに。そういえばペット墓地でもネコの墓が“キティ”になってた」
たくお 「サンリオからクレームくるんじゃね? ほんと、バートンは興味のないものには愛がないんだから。 その猫の飼い主でウンコ占いをする風変わりな女の子の名前もまんま“フシギちゃん”だし」
てるお 「名前すら付けてもらえないというね。 つか、あの女の子、ちょっと怖いんだけど。英語名はなんて言うんだろ?」
たくお 「英語もまんま“Weird Girl”=奇妙な女の子。 人間キャラでは彼女が一番インパクトあった」
てるお 「俺はせむし小僧のエドガー・E・ゴアくんが好きだな。あの小憎たらしい感じが逆に憎めない」
たくお 「名前はバートンが好きなエドガー・アラン・ポーからきてるよね、絶対」
てるお 「ヴィクターのクラスメイトの女の子の名前なんか、まんまエルザ・ヴァン・ヘルシング」
たくお 「科学のジクルスキ先生のモデルは、明らかにバートンが愛してやまないヴィンセント・プライスだしさ」
てるお 「その声を『エド・ウッド』でベラ・ルゴシを演じたマーティン・ランド―にやらせてる。ほとんどバートンの好みで固めてるし」
たくお 「エルザ役にウィノナ・ライダーを起用したのも嬉しかったヨ」
てるお 「彼女にとって『シザーハンズ』以来だから実に22年ぶりのバートン映画。感慨深いねえ。ノニー、おかえりーっ!」
たくお 「さすがに短編の話のままでは時間的にもたないから、クラスメイトのエピソードが大幅に増やされている」
てるお 「前半はほぼオリジナルどおりの展開だったけど、後半でそのクラスメイトが巻き起こす町中大混乱のドタバタ騒動で、待ってましたとばかりにバートンの映画愛が炸裂する。やんや、やんや~!!!」
たくお 「やっぱここで映画ファンの血が騒ぐよねえ。透明人間っぽい魚が出てくるわ、ミイラ男っぽいのが出てくるわ、グレムリンっぽいのが出てくるわ・・・・」
てるお 「で、ゴジラLOVEのバートンが今回出してきたのは、意外にもガメラだったとは!!!」
たくお 「バートンのゴジラ好きは有名。『ピーウィーの大冒険』や『マーズ・アタック』にもゴジラを出してるし、トライスター版『ゴジラ』ハリウッド・リメイクの時でも監督候補に挙がったほど」
てるお 「さすがにゴジラは出しすぎと思ったのかな。で、ガメラにしたとか?」
たくお 「とにかく往年の怪奇映画にオマージュ&リスペクトしまくりなクライマックスは、見せ物映画ならではのあのゴチャゴチャ感が実に楽しかった」
てるお 「まさか『フランケンウィニー』で怪奇パニック映画が楽しめるとは思ってなかったヨ。最近こういうのあまり観てないなあ、という懐かしい感じがまたいい」
たくお 「結末がオリジナルと全く同じ展開で、賛否両論がぱっくり分かれてるよね」
てるお 「でも、展開としてはオリジナルと同じだけど、意味合いは全く違うと思う。今回は、短編ではさほど取り上げられていない“科学の是非”を問うテーマが色濃く描かれている」
たくお 「オリジナルではスパーキー甦って良かったねえーという、わりかし安直なハッピーエンドだったけど、科学の力で生死の境を超えることの意味も描かれて深い話になってた」
てるお 「スパーキーは生前となんら変わらない愛くるしい犬なのに、それ以外はおぞましいクリーチャーに変貌を遂げてしまった。スパーキーとずっと一緒にいたかっただけのヴィクターと、好奇心や功名心のためだけに生き物を実験に使ったクラスメイトたち。両者の違いは“愛” があるかどうか」
たくお 「あれほどスパーキーを疎外していた住民が急に物分かりのいい人になって車のバッテリーで甦らせようとする場面(ココはオリジナルと同じ)や、ピクリと動かなくなったスパーキーにヴィクターが『もう戻ってこなくていいんだよ』と初めて死を受け入れた時、息を吹き返す場面に、都合良すぎ!とダメ出ししてる人も少なくないけど、“科学”よりも“信じる心”が大切であるというメッセージはいかにもディズニー映画らしい着地だし、僕はこのオチで全然OKだと思う」
てるお 「一風変わったジクルスキ先生は、糾弾ばかりする生徒の親たちに向かって『無知が悪いんだ』と反論し、愛する心と信じる心を最後まで失わなかったヴィクターに『君は科学者になるべきだ』と優しく声をかける。“科学の是非”というテーマにもバートンなりの答えを提示しているし、決してありきたりな見せ物映画だけで終わらせていない」
たくお 「愛やハートこそが科学を超える、というちょっとベタな描き方もあえてやってるんだと思うよ」
てるお 「観てる時は普通に楽しめるダーク・ファンタジーなんだけど、よくよく考えたら意外と奥の深いテーマを持った作品なんだと気づかされる」
たくお 「あえて苦言を呈するなら、リメイクとはいえ、車のバッテリーでスパーキーを甦らせようとするあのオチにもうひと工夫欲しかった。まるっきり同じ展開だから感動もちょっと薄味になってしまった」
てるお 「このシーンを観て思ったのは、バートンはリメイク版の『フランケンシュタイン』(94年製作のデ・ニーロ主演のやつ)を観てるのかなと。ラストでフランケンシュタインが殺された恋人を同じ方法で甦らせるんだけど、あまりに惨い姿に生まれ変わった彼女は絶望して自決してしまう。つまり、愛がエゴに負けた時、科学は悲劇を生んでしまうというテーマは両作とも似通ってるものがあると感じたヨ」
たくお 「くしくもその悲劇のヒロインを演じたのはヘレナ・ボナム=カーターだし。絶対観てるでしょ」
てるお 「モノクロのアニメとしては初の3D映画なんだけど、クリーチャー・シーンの所々でそれなりの効果はあったけど、3Dで観るべき!というほどでもなかったかなあ」
たくお 「もっと見世物的な3Dを期待したんだけどね。こういうレトロ感を強調した作品はあえて2Dのほうがいいかも」
てるお 「日本語版はハリセンボンの2人を体育の先生と生徒役で起用してて、木村カエラのイメージ主題歌が流れたらしいけど、俺は『アベンジャーズ』吹き替えアレルギーがまだ完治してないので、意地でも字幕で観ようとわざわざ日劇まで行ってきたよ」
たくお 「ディズニーもさすがに『アベンジャーズ』吹き替えバッシングを反省したのか、メインキャラはちゃんとした声優さんを使ってたけど」
てるお 「そりゃそうだろ。これでまたどっかのアイドルやタレントを起用してたら『あんたらは反省から何も学ばんのか!?』ってクレーム入れてやるわっ」
たくお 「700円するパンフは、表紙は厚紙仕様で絵本風になってたのは楽しい感じでいいんだけど、コミックサイズだったんでちょいビックリだったな」
てるお 「(パンフを手に取って)小っさ! なんか・・・・あんまり読みごたえのないね。『アベンジャーズ』と同じ700円なのにこの情報量の差は一体・・・・。ハリセンボン、カエラのインタビューもあまり読みたくないのに、なぜかIMALUのインタビューに2ページも割いてるこの無駄遣い」
たくお 「ページを開いたらスパーキーが飛び出すぐらいの“遊び”を取り入れるとかさ、それぐらい工夫しろよー」
てるお 「そういや『グレムリン』のパンフがそんな飛び出す仕様になってたなあ」
ココGOOD! 久々に本格的にバートンチックな世界観/キモカワなキャラクターたち/キモカワなクリーチャーたち/古典怪奇映画にリスペクト/オリジナル版よりも掘り下げた“科学の是非”
ココBOMB! ネコの扱いが酷い/エンディングがオリジナル版と全く同じ/3D感はもうひとつ/パンフレットの出来
●満足度料金
てるお 1100円
たくお 1100円
『フランケンウィニー』 70点

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