2015秋ドラマ
ざっくりと本音でレビュー
●最終回ネタバレしてます。苦情は受け付けません
※Yahoo!テレビ評価点数は12月27日時点のもの
サイレーン 刑事×彼女×完全悪女 55点
(関西テレビ・フジテレビ/全9回/最終回視聴率:11.5%/平均視聴率:8.81%)
Yahoo!テレビ評価/3.23点(474人)
山崎紗也夏による人気漫画のドラマ化。
ドラマ版は一部のキャラの設定変更や結末を変えている。
菜々緒の悪女っぷりが話題になっていたが、
確かに彼女の怪演&妖演っぷりはなかなかのもの。
無感情的な殺人鬼キャラなので、菜々緒という存在感と
うまくフィットしたキャスティングだったのでは。
ただ、最終回で要潤の家で松坂桃李と対峙する場面での
演技は「やっぱりまだまだやなあ」と思っちゃったけど。
でももし、日本で『氷の微笑』が作られるのなら
ぜひ菜々緒に演じていただきたい。(もちろんフルヌードでね)
さまざまな謎と伏線が散りばめられ、視聴者は推理を働かせながら
あーだこーだ言いながら楽しむ参加型サイコスリラーとしては
面白かったとは思う・・・・・・ただし最終回直前の第8話まではね。
しかし、ドラマも映画も、最終回やエンディング、
クライマックスでズッコけられてしまうと、それまでの印象も
全部台無しにしてしまう恐れがあるわけだが、残念ながら
本作も最終回でのトンデモ展開に目が点になってしまった。
とにかく、色々と雑すぎるのである。
以下、事件の真相を箇条書きに書いてみたが・・・・。
幸(木村文乃:二役)は本当の橘カラ(菜々緒)を
殺害して彼女になりすましていた(ま、これはいいとして)
8話で撃たれて死んだと思われたカラは
カラを慕う別の女が整形していただけだった
カラの正体である幸は実は夕貴(木村文乃)の生き別れた双子の姉!
偶然、町で夕貴を発見した幸は彼女に執着し始める
夕貴を拉致した幸は里美(松坂桃李)が救出する前に
夕貴の顔に整形手術してなりすましていた
(つまり本来の自分の顔に戻ったってこと)
とにかく最終回だけでこれだけの
どんでん返し(=ツッコミどころ)が盛り込まれている。
ザツなジェットコースタードラマのようなせわしない展開に
観てるこっちは衝撃以前に、ただただ疲れるだけなのだ。
「はあ、なんじゃそれ?」の連続なのである。
これなら夕貴が本当に悪女で松坂桃李をずっと騙してたという
『トータル・リコール』みたいな展開だったら
まだ評価できたかもしれない。そっちのほうがまだしっくりくる。
この双子という設定、ドラマ版オリジナルだそうで
誰だよ、こんな後付け設定した脚本家は!と思ってたら
佐藤嗣麻子でした。ああ、この人ならやりかねんわ。
整形手術しまくって他人になりすませば
驚愕のどんでん返しのミステリーになるだろう、とでも思ってたのか?
『ミッション:インポッシブル』でトム・クルーズが変装マスクを
使いすぎて「なんでもアリ」感が漂ってくるあの感じにも似てる。
そもそもね、菜々緒が木村文乃になり変わるって
いくらなんでも無理ありすぎだ。顔を変えるだけでも大変なのに
モデルの菜々緒は172cm、スタイルは凡人の木村文乃は164cm、
この8cmの身長差はどうやって解決したのだろうか?
骨盤でも削ったのか? それに声もどうやって変えたんだ?
整形医師・要潤の技術力、ハンパねー。
あのね、こういうオチにするんだったら
せめて菜々緒とスタイル的に似た女優さんを
キャスティングするべきだったのではないか?
サスペンスとしては下手すぎだし、観ている最中、
「はあ? どういうこと?」と何度も巻き戻してしまったが
松坂桃李の実に分かりやすい“副音声”的な
謎解きナレーションもたっぷり入ってるので
観ていてこんがらがることはほとんどない。
ただし、これを「伏線が上手いドラマ」と褒めてる人がいるが
いやいやいや、こんなの伏線って言わないから!
「伏線」と「後出し」の違いぐらいは理解しましょう。
気になることは他にもあって、
木村文乃になりすました犯人を逮捕するときの刑事が
(全然敏腕デカに見えない北山宏光のチビデカくん)
全く動じていないところもさ、普通、犯人の顔が同僚と
瓜二つだったらちょっとぐらいはビックリするでしょ?
そういうきめ細かい演出ができてないと気になるんだよ。
幸=木村文乃と、カラ=菜々緒が同一人物であることを
演出上で表現したかったのだろうけど、2人の姿が
ひっきりなしに入れ替わって、結果的にややこしくしてるだけで
演出としてもやっぱり上手いとは言えない。
CG丸分かりなバイクアクションとか
そういう蛇足なシーンを入れてる暇があるなら
もっと謎解きサスペンスとか演出部分をちゃんとしようよ。
なにより監禁されてひどい暴行を受けた上、
「生き別れの双子の姉がいた」「その姉が実は連続殺人犯だった」
という2大衝撃事実を知った夕貴なのに、何事もなかったかのように
ケロッと日常生活に戻れていることがある意味、サイコで怖かった。
普通、そんな経験をしたら人格に何らかの影響を受けるか
トラウマになって刑事辞めちゃうと思うぞ。
実はカラにマインドトリックされて夕貴が第2の橘カラになっていた!
とか、『ソウ』シリーズのような後継者出しちゃう系の後付け続編は
作らなくていいですからね、ホントに。
全体的には65点、最終回で心底がっかりしたので-10点。
最終回で“カラ回り”しちゃいましたね。
無痛 ~診える眼~ 60点
(フジテレビ/全10回/最終回視聴率:9.6%/平均視聴率:7.8%)
Yahoo!テレビ評価/4.24点(639人)
久坂部羊の小説をドラマ化。
ドラマ版は原作からはかなり設定を変えた
オリジナル・ストーリーになっているようだ。
その人物が他者に対して強烈な殺意を抱いた時に
浮かび上がる“犯因症”が見える医師と、
人一倍犯罪を憎み、一家惨殺事件の犯人を追う
若手刑事が手を組んで事件解決に奔走する。
ただの医療ミステリーではなく、
謎解きサスペンス×少々ファンタジーも入っていて
そこそこに好意的に観ていた。ただし最終回直前までは。
最後までキャスティングに違和感があったのが
やたらと発砲して怒鳴ってばかりの早瀬刑事を演じた伊藤淳史。
どちらかというとこれまでの伊藤クンは正義漢まっしぐらな
良い子ちゃんキャラが多かっただけに本作では新境地キャラの
挑戦だったのだろうが、う~ん、伊藤クンから感じる人間的魅力と、
彼が演じる早瀬の暴走キャラ感が全く噛み合っていない。
もっと言うと、なんか白々しいんですヨ。
コトあるごとにギャーギャーわめき散らすだけで
最後まで感情移入できなかったのも問題だし、
最終回では丸腰の中村蒼を躊躇なく撃ってるし。
コイツだけは最後に死んでくれることを祈ってたのだが
残念ながらそうはならなかった。
「俺は刑事を続けます!」って、いやいやあんたみたいな人が
最も刑事に向いてないと思うぞ。
なにより西島秀俊と伊藤英明という2大イケメンに
伊藤クンが挟まれると、どうも浮いて見えてしまう。
この3人に“対等な関係”が築かれていないので
ストーリーそのものにも今ひとつ入っていけなかった。
早瀬役にオダギリジョー、瑛太、小栗旬あたりを起用していれば
ドラマ的にもう少し引き締まったかもしれない。
ま、それはともかく、伊藤英明が出てきた時に
「あ、こいつが犯人だな」とピーンときちゃい、
読み通り、一家惨殺事件の黒幕は彼だったわけだけど
直接手は下さず、中村蒼クンを操って利用していたわけですな。
つるピカハゲ丸くんになってイバラを演じた中村蒼クンの存在感はマル。
西島秀俊、伊藤淳史、伊藤英明、中村蒼が全員集合する
クライマックスでは、西島がやっぱり臭い説教を延々とし始め、
演出としても激クド。映像がまるでフリーズ状態になる。
(ほんと、3~4分ぐらいずーっと喋ってるんです )
伊藤英明の犯行動機も稚拙というかなんというか、
そんなことが理由なの?というガッカリ感もMAX。
で、伊藤英明は中村クンにダイブされ、2人とも落下死。
ここに伊藤淳史も巻き込んで3人でダイブしてくれりゃ
すっきりしたエンディングを迎えられたのに・・・。
なんというか、脈絡がない唐突な展開が多すぎ。
話運びも雑で荒く、全然巧みじゃないし、
ここまで尻すぼみなエンディングは久々かも。
伊藤英明先生を慕う美人秘書(宮本真希)の
本筋とはさほど関係のない襲撃シーンなんかよりも
もっと他にちゃんと描くところがあるでしょうよ。
わたしをみつけて 75点
(NHK/全4回/最終回視聴率:5.0%/平均視聴率:5.33%)
Yahoo!テレビ評価/4.85点(118人)
原作は山本周五郎賞候補にもなった中脇初枝による小説。
親に捨てられ、児童養護施設で育った准看護師が
人々との触れ合いを通して閉ざしていた心を開いていく。
当初は、やはり同じテーマでもある『きみはいい子』の
一篇として書き下ろしたが、後に単独作品として別に執筆された。
原作の舞台は両作とも同じ桜ヶ丘だが、ドラマ版では星美ヶ丘に変更。
この地名の変更にも物語的にちゃんと意味がもたらされている。
全4話だったので、見やすかったドラマなんだけど
その4回分に凝縮されたストーリーの密度が高い。
親に捨てられ、心を閉ざしている看護師・弥生(瀧本美織)、
患者の死亡で院長の誤診を疑う看護師長・藤堂(鈴木保奈美)、
腕に衰えを感じ始める院長・後藤(本田博太郎)と息子の確執、
弥生の心を解きほぐしていく優しき老人(古谷一行)、
恋人のDVに苦しめられる弥生の同僚看護師(初音映莉子)。
この5人のエピソードをメインに話が進んでいく。
なにより素晴らしいのは、瀧本美織の自然体な演技。
「心を閉ざした女性」という役柄だが、終始無表情無感情といった
よく見るステレオタイプな“心閉ざし演技”ではなく、
普通にコミュニケーションは取れるし、笑うこともできるが
他者との一定の距離間を保ち、それをちゃんと演技で魅せる。
正直、これまで女優としてあまり評価したことがなかったけど
本作での彼女は確実に一皮むけた成長を見せてくれる。
養護施設育ちで学校に行っていないため、九九が言えない弥生。
いつも平常心を保っている彼女が老人にそれを見抜かれ、
初めて動揺してしまう。そして彼に九九を教えてもらうことで
自身の傷ついた心も少しずつ癒されていく。
この九九のエピソードがドラマ効果を高めていて素晴らしい。
過去のトラウマから“他人に褒められたい”という願望が強い
ヒロインのひたむきな頑張りに共感が呼び起こされ、
彼女の成長劇がちゃんとドラマを動かす役目を果たしている。
人から感謝されることで生きる喜びを実感していく主人公の
飾り気のない笑顔に癒され、瀧本美織が演じたからこそ
ヒロインの魅力が増したと言っても過言ではないかも。
古谷一行の手術場面ではヒロインが院長にアドバイス
するという、ちょっとリアリティに欠ける展開な気もしたが
ま、困難な山場を乗り越えることでヒロインの未来が開ける
という展開としては、“アリ”かなと。
でもこんな病院で手術は絶対受けたくないけどねー。
ラストカットの星空も含め、
鑑賞後感が大変心地よい良作。オススメっ。
結婚式の前日に 55点
(TBS/全10回/最終回視聴率:5.8%/平均視聴率:5.57%)
Yahoo!テレビ評価/3.07点(260人)
週刊誌の写真スキャンダルのほとぼりが冷めたと判断したのか
香里奈が2013年夏ドラマ『SUMMER NUDE』以来、2年ぶりに復帰。
脳腫瘍を患う女性と彼女を支える人々の姿を描く。
正直、こういう難病モノは苦手ジャンルで
どうせ最終回ではヒロインの死に周りの人間が泣きじゃくって
回想シーンをやたらと入れてきて感動的なBGMを流して
ジ・エンドでしょ~?とタカをくくっていたが、
意外とそんなベタな泣かせ演出にしていなかったところは
数少ない褒めポイントかもしれない。
このタイトルだけで想像すると、死を前にしたヒロインが
挙式に向けて前向きに生きる話なのかと思いきや、
母と娘の物語に趣を置いた作品に仕上がっていた。
ラストカットも「母と娘」で感動的に(?)終えてるしね。
久々のドラマ出演の香里奈は極力スッピンで病人を好演していたが
(あれだけ大がかりな頭の手術なのに
長い髪がそのまんまというのはやっぱりありえないけどね)、
いささか気になったのが母親役の原田美枝子。
幼い頃の香里奈を置いて出て行った母親なのだが
それには「ちゃんとした理由」があって・・・・。
母親は罪滅ぼしのように娘に今してあげられることはなにか、
少なくとも身勝手な人物としては描かれない。
しかしこの母娘物語を美化した展開には少々疑問が・・・・。
原田美枝子が初回でいきなり橋の上から川へダイブするという
目を疑うような場面で視聴者の気を引かせたかったのだろうが、
後の展開でも娘のためなら後先考えないで無茶な行動をする
場面が多くて、この“ハッスル”母ちゃん(独りよがりなオバサン)に
あまり感情移入できず。これは演出上の問題なのだろうけど
共感する以前に“わざとらしさ”だけが前に出ちゃっているのよね。
最終回では娘の結婚式に出ないで黙って海外に飛び立とうとする。
やっぱりこの母親は最後まで娘を心配させているのだから
これで感情移入してくださいと言われても・・・。ボクは無理だわ。
遠藤憲一パパは実は血の繋がりのない育ての親だし、
「母親は何よりも強き存在」として描きたかったのだろう。
それは分かるけど、だとしたらもうちょっとこの母娘の
行く末を見守りたくなるようなお話にしてくれないと・・・。
脳腫瘍という病魔と闘いながら断絶関係にあった
母娘の絆の再生という話のまとめ方が
今ひとつ上手くいってない気がしたし、
何度も入ってくる“秒針の音”演出も少々クドい。
あとね、これもよくドラマで使われていて、
正直、あまり好きじゃないフレーズなんだけど
「人は独りきりでは生きていけない」が
今の時代、どうしてもキレイゴトに聞こえてくる。
誰とも交流を持たず、孤独に生きてる人、少なくないと思うよ。
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