2015春ドラマ
ざっくりと本音でレビュー
●「Yahoo!テレビ評価」の得点、件数は6月17日時点のもの
●最終回ネタバレしてます。苦情は受け付けません(笑)
ようこそ、わが家へ 70点
(フジテレビ/全10回/最終回視聴率:15.0%/平均視聴率:12.55%)
Yahoo!テレビ評価/4.07点(3734件)
池井戸潤氏が2013年7月に発表したミステリー小説のドラマ化で
池井戸作品のドラマ化はフジテレビでは初。
原作では父親が主人公だが、ドラマでは長男に置き換えられている。
しかし、相葉雅紀主演のサスペンス調の家族ドラマと聞いて、
『アルジャーノンに花束を』と同様、「主演している人」問題の
苦手意識が働いてしまったのも事実でして・・・・。
『マイガール』『バーテンダー』『三毛猫ホームズの推理』はリタイヤ、
2013年冬期の医療ドラマ『ラストホープ』はなんとか全話観たけど
今となっては内容なんかさっぱり忘れてしまった。
ま、有村架純が出てるなら視聴続行の理由になるかなあと。(ナニソレ)
なので、放送前は結構ナメてた姿勢で臨んでましたが、
これがなかなかどうして引っ張り引っ張って引っ張りまくる
求心力高めなサスペンス・ファミリー・ドラマに仕上がっていた。
うん、素直に、いや、かなり楽しんじゃいましたよ。
相葉クンらしい“ナヨナヨした存在感”が
本作での頼りにならない兄貴感とマッチしてて
思ったほど悪くなかった印象。当たり役なのでは。
しかしまあ、名無しさんの事件に便乗した模倣犯が
一度に3人も出てくる非現実的な展開は少々気になったが、
(この家族、どんだけ周囲に恨まれてんだよ、というね)
普通に生きている人の何気ない言動が他者に恨まれて
身に覚えのない嫌がらせや事件に遭うという
現代社会の病理ともいえるこのテーマは
あながちフィクションとは言い切れないかも。
しかし南果歩演じる楽観すぎるママさんには
堀内敬子がイラつくのもなんか分かる気がする。
それと足立梨花が出てきただけで
「彼女のせいでなんか嫌な展開になりそう」という
ボクの予想は見事に当たってましたヨ。
このコ、こういうヤな女の子役がほんと多いよね。
すっかりイジメ役が板についちゃって・・・・。
オシリーナ以上に美しいプリケツ持ってるのにね。
模倣犯たちはとっとと逮捕され、
最終回では名無しさんとの対決を迎えるわけだが
まさかの市川猿之助が見参!とは。
1話だけの顔見せ出演だったが、名無しさんの
ねちっこい異様な存在感をちゃんと醸してましたなあ。グッ!
あの意外性のない結末に拍子抜けしたという声も多いようだけど
いやいや、アレ以上に必然的なオチはないでしょ。
むしろ気になったのが、ドラマ版オリジナルキャラの
沢尻エリカ演じる明日香。初回での健太との再会シーンは
かなり不自然だったし、倉田家にズケズケと入ってくるから
ボクの中では怪しさ120%だったんだけど、実は何でもなかった。
健太と一緒に名無しさんを追い続けるなか、ある事実に気づく明日香。
9話のラストで「私も黒い感情に突き動かされ~」みたいな
意味深な独白を入れて展開を煽ってたが、あの不要な煽りが
逆に拍子抜け感を大きくしてしまっているのはザンネン。
ラストで「愚かな私が倉田健太に救われた物語である」と言われても
別にそんなに歪んだキャラじゃなかったよね?
別にサドル傷つけたぐらいでそんなに凹まんだって・・・。
しかも、警察に指摘されるまで名無しさんと知り合いだったことを
倉田家に黙っていたのも、これまでの明日香のキャラからしたら
ブレてる感じも否めない。彼女なら真っ先に告白するはずでは。
一方、寺尾聰 VS 竹中直人の使い込みバトルも見ごたえ十分。
ずっと劣勢だった寺尾聰が最終回で竹中にギャフンと言わせる
クライマックスシーンは、『半沢直樹』の香川照之級の
笑えるぐらいのド謝罪とは言わないまでも、スカッとシメてくれる。
これぞ、THE カタルシス!
ていうか、あの無能社長にも鉄槌を下してほしかったけどね。
この無能社長が一番悪いんじゃね?って思うんだけどさ。
1本で1.5本分トクした感じがずっとあったのは
名無しさん事件、竹中とのバトル、そして家族ドラマと
それぞれのパートをきっちりと持続力を保った演出で
魅せてくれていたため。ちゃんとオイシイところで終わらせて
次週も見たくなるストーリー構成も上手かったし。
な・だ・け・に!
最終回のエンドロール後の「名無しさんの復讐」を思わせる
しょうもない余計なシーンを入れてきたのは大きなマイナス。
あの安っぽいサスペンス映画みたいな演出で-30点。
最後は、倉田家が明日香に「いらっしゃい」じゃなくて
「ようこそ、わが家へ」と歓迎してジ・エンドでいいじゃん。
それこそがイキな終わらせ方じゃないの? 余計なことばかりして。
一応、キレイに終わってんだから、続編とかもういらないよ。
あとね、佐藤二朗は嫌いじゃないんだけど
あのマンガなテンションでこられると福田雄一色が
強くなっちゃうから、もうちょっと演技のトーンを変えてくれい。
64(ロクヨン) 90点
(NHK/全5回/最終回視聴率:3.6%/平均視聴率:3.88%)
Yahoo!テレビ評価/4.83点(574件)
心筋梗塞で倒れ、記憶障害にも苦しめられた
原作者の横山秀夫が改稿作業を続け、一度の出版中止を経て
2012年10月に刊行した推理小説をドラマ化。
地方県警を舞台に、平成突入直前の昭和64年に起こった
幼女誘拐殺人事件と、平成14年に発生した
少女誘拐事件を広報官の視点から描いた警察ドラマ。
原作未読、ピエール瀧が主演なので、期待も何もせず鑑賞したが
これがまたすこぶる完成度が高くてドラマ力に満ちた作品だった。
重厚で良質、そして驚愕。紛れもない傑作。
1週間に10本以上のドラマを観ていると、さすがに
テレビ画面と1時間じっと向き合うことが物理的に不可能になり、
どうしても“ながら観”が多くなってしまうのだけど、
本作だけは“しっかり観”。というのも、画面隅々に
いたるまできちんとした演出が施されているから。
まず公式サイトで、かなり入り組んだ人物相関図を見て
少々ゲンナリしたが、キャラクター関係は分かりやすく
配置されているので観ていてこんがらがることはまずない。
物語に重要な役目を負う人物は限られるため
話にも入りやすいし、それどころか各人物に感情移入や
共感しやすいように演出的にも配慮されている。
物語は5つがメインとして動き出す。
昭和64年に起こった幼女誘拐殺人の未解決事件、
刑事部と警務部の軋轢が絡んだ長官視察問題、
マスコミが要求する実名公表問題に振り回される広報室、
ピエール瀧扮する主人公・三上と家出した娘の確執、
そして新たに発生する少女誘拐事件。
一見無関係に思える5つの出来事がクライマックスに向けて
集約されていき、数々の伏線も見事に回収されていく。
回収するためだけの下手な伏線仕込みとは違い、
それらの伏線が物語の直接的な効果を担っているため、
凡作ドラマによくある「後付け」とか「こじつけ」のような
無理くりな展開に陥っていないのが素晴らしい。
ピエール瀧の感情をあまり表に出さない
実直な主人公像が見事なまでにハマっており、
ドラマオレデミー賞では今のところ間違いなく主演男優賞。
顔がでかい(失礼)、背が高いという威圧的な存在感があるのに、
未解決事件と家庭問題と組織のパワーバランスに振り回される姿が
なんとも滑稽で、しかもムチャクチャ渋い。
劇中、二度涙を見せる場面ではこっちの涙腺も決壊しそうになった。
そして幼い愛娘を惨殺され、妻も失った孤独な男に扮した
段田安則の怒りを胸に秘めた“静かな怪演”もお見事。
ドラマオレデミー賞なら間違いなく助演男優賞。
最終回で明らかにされる彼の異様なまでの執念が
また熱い感動を呼び起こしてくれるのだ。
幼女誘拐殺人という重いテーマを扱いながらも
サスペンスとしても、人間ドラマとしても、
そしてエンターテインメントとしても最上級の出来。
間違いなく観るべきドラマの1本。
ちなみに来年には、佐藤浩市、綾野剛、榮倉奈々、瑛太ら
豪華俳優陣を揃えた映画版が2部作で公開される。
ドラマ版でこれほど以上を目指すのが困難なほど
完成度の高いものを見せられたのに大丈夫か?と、
どうしても思ってしまうし、しかも監督が
『フライング☆ラビッツ』(ひええ~)『感染列島』
『ヘヴンズ ストーリー』『アントキノイノチ』など
BOMB映画を連発している瀬々敬久なのでかなり心配だお・・・・。
マザー・ゲーム ~彼女たちの階級~ 65点
(TBS/全10回/最終回視聴率:10.5%/平均視聴率:8.82%)
Yahoo!テレビ評価/3.61点(1092件)
名門幼稚園を舞台にバツイチでシングルマザーの貧乏主婦と
裕福な家庭で暮らすセレブ主婦たちの友情と葛藤を描いたドラマ
・・・・と聞くと、どうしても『名前をなくした女神』の薄味版なのか?
と、邪推してしまうんだけど、実際は似て非なる内容だった。
ぶっちゃけ、アチラはもっとギスギスしてて陰湿な
蹴落とし蹴落とされバトルが繰り広げられたが、コチラは
色々な問題を抱えたママたちが邁進型の木村文乃ママの頑張りで
1つずつ解決していくというお話なので、最終回も
みんな仲良しこよしの想定内のハッピーエンドで終わる。
長谷川京子ママは姑のモラハラに頭を悩ませ、
安達祐実ママは夫のDVに苦しめられて不倫に走り、
貫地谷しほりママはギャンブル依存症に陥って闇金に手を出し、
ママカースト最上位の壇れいママは引きこもりの長男問題に苦悩。
木村文乃ママは、だらしがない夫と離婚してバツイチ、
低所得で悪戦苦闘しながらも、他のママとは違って常に前向き。
世間体ばかり気にするセレブママどもをためらうことなく
一喝するキャラ像はなかなか好感が持てましたヨ。
ただ、文乃ママが他のママのために奔走する話がほとんどなので
一体、何のドラマを観てるんだろうか?とは思ったし、
毎回、クライマックスで誰かに熱弁をふるう場面では
『花咲舞が黙ってない』みたいな快活コメディなら分かるけど
本作のようなヒューマンドラマであまりそれに頼りすぎると
どうしてもシラケてしまうといった軽視できない不満もあり。
また、このドラマに限らず、最終回になるとさまざまな問題が
“事務的”に片付けられていくという急に雑な展開になって
ガッカリさせられることが多く、残念ながら本作も
「急いで片付けちゃいました」感は否めなかった。
もうちょっとこのへんは丁寧に整理整頓してほしかったですな。
結果オーライなら別にイイんじゃね?と、いつもより広い心で
観られたのは木村文乃のあざとさを感じさせない好演があったから。
デビュー10年目にして主演ドラマを勝ち取った
木村文乃は堂々と主人公を演じきっていて好感度アップ。
毎回冒頭でココリコ田中としょーもないやり取りをしている場面を観て
彼女のコメディエンヌ力はなかなかのもの!と、お見受けしましたぞ。
Dr.倫太郎 60点
(日本テレビ/全10回/最終回視聴率:13.0%/平均視聴率:12.71%)
Yahoo!テレビ評価/2.88点(1737件)
中園ミホによるオリジナル脚本ドラマ。
『半沢直樹』『リーガルハイ』という2大ヒットドラマで
すっかり時の人となった堺雅人が今度は精神科医に扮する
ということでそれなりに期待値は高かったんですけどね・・・・。
心にぽっかりと穴があいた人をショック療法で治す
喪黒福造の「心のスキマ、お埋めします」
・・・・・じゃなくて、こちらは闇を抱える患者に対して
堺雅人がシリアルな状況でもいつも笑ってる“にこやかスマイル”を
駆使して「あなたの心をほぐします」的な治療を施す。
堺の武器でもある“にこやかスマイル”と温かい存在感は
倫太郎のキャラにピッタリとハマっている。
(最終回で小日向文世に「笑ってるじゃないか」と言われて
「こういう顔なんです」と言い返す場面ではちょっと笑った)
ぶっちゃけ、今回は“キレない半沢直樹”なので
堺雅人の演技力が素晴らしいとか言うつもりは全くないけど、
ただ、放送開始時ではたまに“古美門研介”が出てきてたので
二面性を持ったキャラなのかと思ったが、全然そうではなかった。
スーパー精神科医であり、ひとりの患者に恋心を抱く男でもある
という意味では、二面性キャラなのかもしれないが・・・・。
心療内科という即効薬がない医者の話なので
ストーリーの進行もかなりゆったりとしていて、
劇的な展開がそれほどあるわけでもない。
それがすごく退屈に思う人もいるかもしれない。
(実際、ボクも退屈したし)
『Dr.コトー診療所』のように人と人とのつながりに重点を置いた
こういうメンタル系なお医者さんドラマとなると
視聴者の心にスッと染み入るような心地よい鑑賞感が
必須だと思うのだが、それがあるワケでもなく・・・・。
遠藤憲一も、松重豊も、石橋蓮司も、そして小日向文世も
なんらかの心の病を抱えていて、倫太郎と接すると
自動的に“快方”に向かっていくのだが、
そこにリアリティや一定の説得力があまりもたらされない。
そもそも劇中人物が自動的に惚れていく倫太郎に対して
視聴者にとってはそれほど惹かれるキャラでないのが
このドラマに漂う残尿感の要因なのかも。
どうも作り手もこのドラマをどう見せたらいいか
迷っているという感じがするし、それが伝わってきて、
こっちもどう観たらいいのかよく分からないもどかしさだけが
常に付きまとったドラマだった。
ぶっちゃけ、 主人公が患者の心を解きほぐすドラマなのに
観ているこっちはそれほど解きほぐれなかったもどかしさ。
とはいえ、蒼井優の二重人格演技と
高畑淳子のサイテーなクズママっぷりはサイコー。
ちょうどCSで『3年B組金八先生』を見直している時だけに
金八先生では良き養護の先生である
高畑淳子の豹変っぷりはちょっとショックだった。
娘にあんだけヒドいことしてたあのクズママに
大した罰が下らないのは個人的には大きな不満だったけどね。
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