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Channel: ぶっちゃけシネマ人生一直線!❁
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シネトーク197『風立ちぬ』●モヤッとボールをいっぱい投げたくなった

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白い映画には愛を捧げラブラブ! そうでない映画には鉄槌を下すパンチ!
たいむぽっかん
ぶっちゃけCINE TALK!!!

●今日のぶっちゃけなシネ言
「日本映画って3Dを全然やらなくなったねえ。結局、尻すぼみ」





シネトーク197
『風立ちぬ』




監督・原作・脚本:宮崎駿 音楽:久石譲
声の出演:庵野秀明/瀧本美織/西島秀俊/西村雅彦/スティーブン・アルパート/風間杜夫/竹下景子/志田未来/國村隼/大竹しのぶ/野村萬斎


2013年/東宝=スタジオジブリ/126分/ビスタサイズ/東宝配給(2013年7月20日公開)


●ストーリー
少年時代に夢の中で憧れのカプローニ伯爵と出会い、飛行機の設計士になることを決意した堀越二郎。1923年、東京帝国大学に進学するため上京した彼は、列車の中で里見菜穂子と出会い心惹かれる。そしてその移動中に関東大震災に遭遇、混乱の中で菜穂子とお供のお絹を助ける。卒業後、晴れて三菱内燃機株式会社への入社を果たした二郎は、念願の設計士としての道を歩み始める。しかし視察したドイツのユンカース社で技術力の差を痛感し、設計主務者に選ばれた七試艦上戦闘機のテスト飛行も失敗に終わる。1933年夏、失意の中で軽井沢を訪れた二郎は、そこで菜穂子と運命の再会を果たす。(all cinemaより)




要注意! ネタバレあります!!!






観客を突き放した宮崎駿の英断?


近年のジブリ映画って昔ほどに楽しませてくれないということもあってか、それでもジブリが好き!という熱狂的ファンと、「ジブリはもう終わった・・・」と突き放す人で二分化されつつあるけど、本作もまた賛否真っ二つに分かれた作品。海外のさまざまなアニメ賞を獲っているけど、これまでのジブリ作品とは毛色をガラリと変えてきた内容に戸惑った人も多かったようで・・・・。ハイ、ボクもその1人です。ショック!


そりゃいつものジブリファンタジーでないことは分かっていたし、むしろ『コクリコ坂』に近いヒューマン・テイストな作品なんだろうと思って公開初日に観てきましたが、それでも初めて観たときは「モヤッとボール」をいっぱい投げたくなる感じで劇場を後にしました。皆さん、そんな感じじゃなかったですか? 「コレ、面白いんだろうか、そうでないのか、良い作品なんだろうかそうでないのか・・・・ゴニョゴニョ」というね。 





Yahoo!映画評価では3.34点 で、宮崎駿の狂った暴走ファンタジーとして話題騒然になった『崖の上のポニョ』と同じく、やはりそれほど高くない評価。

ただ、明らかに子供向けの純粋なファンタジーだと思っていたら、中身は大人でも困惑するほどのドラッグ性の高いファンタジーだった『ポニョ』に対して、こちらは難解な描写と演出に置いてけぼりを食らい、作品そのものの“意図”が分かりづらい、または飲み込みづらいことに“距離感”を感じた観客がほとんどだったようだ。


これがもしジブリアニメじゃなかったら、明らかにこんなに拡大公開してないだろうし、ヘタすりゃ単館上映で終わってそうな内容で、ジブリだから大勢の人が観て、困惑した人が各地に続出したという異常現象が発生。にひひ そりゃ仕方がないですヨ。

とはいえ、「何が面白いのかイマイチ分からなかった」と叩かれている本作ですら120億円も稼ぐのだから、ジブリブランドの強さを改めて実証したと言えます(ま、公開して落ち着いた頃に宮崎駿が引退宣言をした影響もあって興行的に盛り返したというのもあるけど)。





零戦づくりに情熱を注いだ、人生をかけた男の話だし、万人に分かりやすく、かつ面白く作られている作品でないことは明白なんだけど、しかしここまで観客を突き放した内容だとは思いませんでしたわ・・・・。ショック!


実際、“いつもの”ジブリ映画を期待して観に来ていたと思われる家族連れが前の席に座っていて、4、5歳ぐらいの子供が開始20分ぐらいでソワソワし始めて、30分後には母親の膝の上でグースカ寝てましたよ。にひひ そりゃ事前にどういう作品か調べないで子供を連れて来る親御さんもどーかと思うけど、“いつもの”ジブリファンタジー色強めなあの予告編もどーよ?という気がするのね。いつものゲラゲラ笑える三谷コメディ(三谷映画でそんなに笑ったことはないけどシラー)だと思って観に行った『清須会議』が全然笑えなかったというのもあったし、最近の東宝の宣伝に騙され率が高くなってるような気がする。もっとイイ意味で騙してほしいんだけどね。シラー



堀越二郎本人のことはそれほど知らなかったけど、基本的に「あることに夢中になる人のオハナシ」が好きでして・・・・。

本作は「実際の堀越二郎の話」に、堀辰雄の著書『風立ちぬ』も加え、さらに「宮崎駿の父の物語」と若干の「ファンタジー視点」もブレンド。なので、堀越二郎の混じりっけなしの実話でないことは分かっていたし、堀越の遺族も創作であることは了承しているし、宮崎駿視点による、宮崎駿が思い描く堀越二郎映画を作り上げた!というクリエイター・スピリッツはきちんと伝わってきたし、しかと受け止めた!・・・・つもりではいます。多分、駿さんは“何かに夢中になってモノを作る”という側面で、堀越二郎と自分をダブらせているんじゃないかなと、観ている間はそんな感じがしました。


なんでしょうね、映画作家が敬愛するある人物を描きたくて、並々ならぬ熱意と執念で完成させた作品と言われたら、やっぱりスピルバーグの『シンドラーのリスト』を思い出すんだけど、あの作品だってオスカー・シンドラーという人物の真実をそのまま映画化しているのではなく、スピルバーグ視点のシンドラー像も入っているワケで(入りすぎてシンドラーの奥さんからは「ダンナを美化しすぎ!」とクレームを出されたほど)。面白い、つまらないは別にして、作品的雰囲気はそれに近いものを感じました。



淡々としているけど、堀越二郎の生い立ちを切実に、丁寧な筆致で描いた演出は評価に値します。何かに夢中になってがむしゃらに頑張ってきた人ほど本作に共感しやすいだろうし、ボクも夢中になれることにはガンバレルマンなので、主人公の思いや生き方には“ある一定の共感”はしていました。ニコニコ
なにより、ジブリアニメにしては珍しく大人の恋愛シーンも濃厚に描写されていて、「ジブリも大人になったかあ」と、なんだか子供が大人に成長していく過程を見せられている感じがして、ちょっとしみじみ(子供連れで観に来ていた親御さんはあのシーンにかなり困惑してたようだけど)。ニコニコ




堀越二郎が妄想世界に入り込むいくつかのシーンでは“いつもの”ジブリらしいファンタジー世界になり、やっぱりそこでテンションが上がりますなあ。“風立ちぬ”ならぬ“風なびく”描写はさすがのジブリ・クオリティで魅せてくれ、フルCGでは表現できない“アニメ的気持ちよさ”がそこにはある。すべてスタッフの声で作ったという飛行機のエンジン音もそれほど違和感は感じなかった。グッド!




物議を醸した喫煙シーンだって、昭和20年代の大人のほとんどは喫煙していたのだから、それは“ごく当たり前”の描写であって、それを今の規制基準に照らしてクレームを付けてくる「NPO法人日本禁煙学会」はバカなんじゃないの?と憤慨しましたけどね。プンプン 殺人や暴行シーンのある映画に警察がクレームを入れるか? 「表現の自由」がすべて許されるとは思っていないけど、ドラマ『明日、ママがいない』といい、一部の機関が過敏に反応してくる昨今の流れはハッキリ言って気に入りません。

とはいえ、肺結核を患って寝込む菜穂子の横で二郎がプカプカ吸い始めるあのシーンだけは、ボクもちょっと納得できぬ描写で、二郎は菜穂子のことを本当に愛しているのか?とさえ思ったほど。あそこは何度観てもピンとこない・・・・。むっ





共感できる部分もあれば、そうでない部分も決して少なくないわけで、一番の問題は「全体を通して観るとそれほど面白いわけではない」というね(言っちゃったにひひ)。ま、映画は「面白い」「つまらない」だけで決められるものじゃないけど、じゃ「残る」「残らない」で考えたら、「すごく残ったところもあるけど思い出しにくい」というのが、正直な印象デス。

2回観てるけど、それでも作品の全体的な印象はなんか「薄い」んですよ。世間では評価の低い『ポニョ』ですら、まだ“狂った宮崎ファンタジー”という意味で脳裏に焼きついてますからね。追いかけてくるポニョがコワイとか、子ポニョがいっぱいいて気持ち悪いとかにひひ、チキンラーメンを食べる場面やおもちゃの船で散策するシーンが結構好き、とかね。


ボクの映画基準のひとつの目安にしている「カタルシス」にしたって、本作はそれほど映画的興奮が味わえるわけはないので、そこもやっぱり「薄い」。今回、宮崎駿監督は「分かる人にだけ分かってくれればいい」という姿勢で作っているので、そもそも万人ウケを狙ってない。だから「つまんない」「よく分からない」という観客が続出して当然なんです。





二度目に観たときは初回時ほどの拒否感はなかったけど、じゃあこの作品を100%理解して、受け止められたか、と言われたら「否」です。


その最大の理由は、やっぱり庵野秀明による声・・・・・。あのキョーレツな棒読み感は宮崎駿があえて狙ったものらしいけど、う~~ん、その意図がよく分からない。そもそも庵野の質が堀越二郎というキャラとまるで合ってないし、あまりにも無感情なのでやっぱり感情移入しずらい。こっちが作品に一生懸命入ろうとしているのに、あの棒読みがノイズになって全然入れない。観客から感情移入されるのを拒んでいるんじゃないのか?というぐらいの“距離感”を感じたほど。シラー


戦時下で零戦を作っている男の話なのに、妄想ばかりしていて、大して葛藤してくれないので実に共感しづらい。ショック! つまり“何を考えているかよくわからない主人公”という、今までにいなかったジブリキャラなんです。いや、何を考えてるかわからない怖さという意味では、ポニョとどっこいどっこいか。

「何を考えているか分からないし、友達になる気はないけど、なんか気になるよなあ、アイツ」という人、たまーにいますよね。堀越二郎ってまさにそういうヤツなんです。そういう意味では、これまでのどのジブリキャラよりも突き抜けています。


で、最後まで違和感を残したまま話が終了。庵野の無感情ボイスで評価を落とした人も少なくないようで、ボクも観てる間は「もうちょっと、もうちょっとでいいから感情出してよ!」と二郎よりもこっちが勝手に葛藤してましたヨ。いいんかい、それで。にひひ 




逆に瀧本美織の声は違和感なく、むしろ戦争下でひたむきな愛に生きる清楚な女性感がきちんと出ていたし、丁寧な仕事をしているという印象。彼女の「きて・・・」が妙に艶かしくてヨカッタです(←バカにひひ)。彼女が本当にヨカッタだけにね、非常に惜しまれますわ~。こと声優キャスティングに関しては昔から批判の多いジブリ。『おもひでぽろぽろ』の今井美樹&柳葉敏郎のようにハマっているのもあるんだけどね。





これまでの“誰にでも分かりやすい”ジブリをあえて壊し、説明描写の省略や唐突な場面展開といった壮大な実験を試みた宮崎駿。制作中から既に引退を決意していたのだから、そのこだわりと熱意はいつも以上に注がれていたのでしょう。それが世間に受け入れられたかどうかは別にして、本作は引退作にふさわしい作品に仕上がっている・・・・・とは思います。グッド!





この作品、その人の年齢や人生観、価値観によって受け止め方もかなり変わってくると思うんです(ま、どの映画でも基本そうだけどね)。

愛する人ができた時、家族ができた時、守るべき人を失った時、夢中になれるものを見つけた時・・・・。今のボクはモヤッとボールを投げたくなる作品だったけど、10年後に見直したら、まだ理解していない本作の奥深さに気づくかもしれません。


宮崎駿監督は長編アニメ制作から去り、鈴木敏夫プロデューサーも勇退(ゼネラルマネージャーとして在籍)。強力な作り手を失い、宮崎駿のDNAを受け継いだ若手(息子の宮崎吾朗のことじゃなく)があまり育っていないように思える今のジブリに一抹の不安を感じつつも、ファンが夢中になった初期の傑作、名作がまた生まれてくることを切に願いたいもんです。





『風立ちぬ』 65点

●満足度料金/1100円 かお







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