なんだかんだ言っても面白い!
PART1
スピルバーグ3年ぶりの監督作で
初のCGアニメ、初の3D作品として話題になっている
『タンタンの冒険/ユニコーン号の秘密 』が公開!
公開を記念して、てるおとたくおがスピルバーグ監督(ほぼ)全作品の
魅力と(ダメなところ)を好き勝手に語る!
たくお 「『タンタンの冒険』ついに公開されちゃったね」
てるお 「まあ、文句なしの傑作!とまでは言えないけれど、古き良きアドベンチャーの醍醐味はしっかり盛り込んでる。ただ、ヤフー映画レビューの点数が『怪物くん』より低いってのが納得できん」 ※12月4日現在
たくお 「まあ、そのへんの不満は後日のシネトークで(笑)。で、今回はスピルバーグ監督作品をまるごと振り返ってみようというスペシャルな企画を用意してみました」
てるお 「もろスピルバーグ世代の俺が語っちゃうとうるさいよ。ホメるとこはホメて、叩くとこは叩き落とす!(笑)」
たくお 「『自分が観客となってお客さんにどうやったら楽しんでもらえるか』を常に考えながら映画を撮っているというスピルバーグ。なぜ人はスピルバーグ映画にこんなにも魅了されるのか。それを改めて検証していこうじゃないかと」
てるお 「そんな大それた企画じゃないけどね。スピ映画のココが好き、アレがいい、という程度のぶっちゃけトークですから」
たくお 「ちょっとは大それろよ。監督作だけで全26作品もあるので5回ぐらいに分けてトークしていこうかと」
てるお 「うへぇ~、26本もあるのかよ・・・・」
●ここスピ!=スピルバーグ映画らしいカタルシスが味わえるシーンや衝撃的なシーンなど、DVD・BDで必ず観ちゃう名場面
●ここダメ!=コレがなければ傑作になってたのに!という残念、心残りなシーンなど
★は20点、☆は10点。100点満点。
だだっ広いアメリカだからこそ成立した傑作カーチェイス
激突! ★★★★★
1971年/ユニバーサル映画
てるお 「もう“神”映画だね。あ、“神”ドラマか」 ※本作はTVムービーとして製作され、米国以外では劇場公開された
たくお 「スピは冴えまくりの演出でいきなり世界中に名を轟かせ、華々しいデビューを飾った。てか、25歳でこれを撮ったというのがもう神だわ」
てるお 「州をまたがって一本道が延々と続くアメリカだからこそ成り立つ話。これがもし日本が舞台だったら狭い路地に逃げ込んじゃえばいいだけだから(笑)」
たくお 「タンクローリーのファーストカットが秀逸。本作のためにわざわざ改造したタンクローリーの“顔”が凶暴なモンスターのようで恐怖感をグッと高める」
てるお 「まるで獰猛な動物の咆哮のような爆音で追っかけてくるのは、まさに『ジョーズ』『ジュラシック・パーク』の“源流”だわな」
たくお 「タンクローリーの運転手の顔を最後まで見せないサスペンス演出も見事すぎる。手やブーツだけで印象付けるところがいい」
てるお 「うちのオヤジは映画はめったに観ないんだけど、本作が放送されてた時、珍しく録画してて何度も観てたなあ。映画を観ない人も夢中にさせる“吸引力”があるよね」
たくお 「ま、話なんてないからね。一行で書けるようなこれほどシンプルなストーリーをここまでの演出で魅せるのは並大抵の監督じゃできないよ。犯人は誰だ!?的な心理スリラーとしても上質」
てるお 「車が故障してタンクローリーが近づいてくるクライマックスは観てる方もアセるんだよね。ビクビクしてる主人公の焦りがリアルに伝わってくる(笑)」
たくお 「タンクローリーが崖から豪快に落ちていく場面をスローでじっくり見せるエンディングはカタルシスの極み!」
てるお 「落ちた後の“静けさ”の余韻もいい。運転席の扇風機だけが動いてて、カラカラ回ってたタイヤがピタリと止まる」
たくお 「そうそう、あの余韻いいよね!」
てるお 「細かいことなんだけど、車と衝突してタンクローリーが落ちていくシーンでVHSやLDはなぜかひどい音ズレがあったんだよ。それがずっと気になってたんだけど、DVD版でやっと修正された」
たくお 「でもDVD版は5.1chになったんだけど、効果音も全部差し替えられているからオリジナル音源のモノラルが入ってないんだよね」
てるお 「穂積隆信のTV版吹き替え付きの『思い出の復刻版』DVDはモノラルだけどね。もう廃盤でプレミア化してるけど」
たくお 「おおっ、あのDVD持ってんのか? ちょーだい!」
てるお 「ヤダよ。でもどうせなら宍戸錠バージョンと徳光和夫アナバージョンも同録してほしかった」
たくお 「えっ? 徳光アナが吹き替えてたバージョンなんてあるんだ。それ観たいぞ!」
●ここスピ!=“走行音”でタンクローリーが近づいてきたと思いきや実は列車だった!/電話中の主人公に突っ込んでくるタンクローリー/タンクローリーと車のガチ対決~崖からの落下
●ここダメ!=ダメなところないっしょ!
保安官役のベン・ジョンソンの存在感が素晴らしい
続・激突!/カージャック ★★★☆
1974年/ユニバーサル映画
たくお 「で、スピルバーグの劇場デビュー作となる本作は、実際の事件を基にしたニューシネマ仕立てのアクション・サスペンス」
てるお 「ちょっとその監督の映画が当たったからってなんの関係もない作品を勝手に続編にしてしまう日本の配給会社の嘘っぱちな売り方は当時はよくあったけど、この邦題はやっぱイヤだな」
たくお 「当時、『激突!』の続編なんだとまんまと騙されてレンタルで観たよ(笑)」
てるお 「俺も(笑)。原題の『シュガーランド・エクスプレス』のままでいいんじゃね?」
たくお 「それだと列車サスペンスものだと思っちゃう人もいるんじゃないの?」
てるお 「当時はまだニューシネマの影響があって、スピルバーグも主人公カップルをボニー&クライドに仕立てたのは一目瞭然」
たくお 「アクション映画というよりもヒューマンなドラマとして観るべき作品だけど演出のぬるさも否めない。でもどのキャラも魅力なので最後まで飽きさせない工夫がしてあるのはスピルバーグらしい」
てるお 「ゴールディ・ホーンは魅力的なのは言うまでもなく、ちょっと頭の足りないダンナ役のウィリアム・アザートンも存在感を放ってる」
たくお 「この男優さんって『ゴースト・バスターズ』で幽霊を街中に解放しちゃうバカ役人や、『ダイ・ハード1、2』で事態を悪くしていくバカレポーターの人だよね? なんかニクめない役が多いな(笑)」
てるお 「あと、夫婦を見守る保安官のベン・ジョンソンがめちゃくちゃイイ。2人を面白半分で銃撃するハンターにブチギレる場面とか、事件を荒立てないようにしようと奔走する姿に共感したよ」
たくお 「夫婦と彼らに拉致された新米警官とのやりとりも好き。初めは対立してた彼らが徐々に打ち解けあう展開はこの手のドラマの常套手段なんだけど、やっぱり胸を打つものがある」
てるお 「ラスト、夕焼けの川辺でその新米警官が『彼らは一度も撃ちませんでした』と話すシーンが泣かせるんだよ。あのシーンは本当に美しい」
たくお 「『激突!』に比べてアクションは控え目だけど、ワイドスクリーンの構図をフルに活かした何百台のパトカーが列を作るビジュアルが印象的だった」
てるお 「本作から音楽は生涯の名コンビとしてずっと組むこととなるジョン・ウィリアムスなんだけど、ハーモニカを用いたウエスタン調のスコアはかなり異色。でも作品に見事にマッチしてる」
たくお 「すっごいイイ曲だよね。ぜひサントラ化してほしい!」
てるお 「俺、BOOT盤のサントラなら持ってるよ」
たくお 「マジか!? くれ!」
てるお 「やなこった」
●ここスピ!=ベン・ジョンソンの存在感/夫婦と警官の車中でのやり取り/ラストの夕暮れシーン
●ここダメ!=スピのせいじゃないけどダメダメな邦題/服役中の夫があっさりと刑務所から脱獄できちゃうところ(笑)
すべてにおいてパーフェクト! ホオジロザメがしつこすぎる以外は(笑)
ジョーズ ★★★★★
1975年/ユニバーサル映画
てるお 「20代にして早くも2本目の“神”映画を生みだしたスピ。いやはや、恐るべし!」
たくお 「撮影中、機械じかけのサメが思ったほど動かなかったことが逆に功を奏し、“見せすぎない恐怖”によって醸しだされるこの緊迫感は今でも全く褪せてない」
てるお 「機械ザメはCGでは味わえない質感がある。時折、アップになった歯をよく見るとステンレス製であることが軽くバレちゃってるけどそこはご愛嬌(笑)」
たくお 「何度もブルースくんが動かなくなるトラブルに見舞われたスピはクランクアップ時、『現場には二度と戻らない!』と吐いて去っていたエピソードは有名だね」 ※ブルースとは撮影中に名付けたサメの名前。スピルバーグの弁護士の名前を取っている
てるお 「♪ダ~ダン、ダ~ダンとジョン・ウィリアムスの名スコアと、サメ目線によるオープニング・タイトルからガッチリとツカんでくる演出は完璧の域」
たくお 「スピらしいバイオレンス描写もたっぷり。子供が食い殺されるショッキングなシーンは今のスピじゃ絶対に撮ってないはず(笑)」
てるお 「俺、小さい時にあのシーンがトラウマになって、当分海に入れなくなったもんなあ」
たくお 「前半は襲撃事件続発編で後半はサメ退治編。シンプルな話は2部構成になってて、それぞれに見せ場を配分よく取り入れてるのがウマイ」
てるお 「あとロイ・シャイダー、ロバート・ショウ、リチャード・ドレイファスのキャラ勝ちに尽きる。やっぱり映画はキャラが面白ければ、劇的に面白くなることをスピは立派に証明した」
たくお 「頼りない市長ブロディと男気あふれるクイントとの対照的な描き方がずば抜けて面白い。知識でサメに立ち向かう海洋学者のフーパーが2人の間に入り、3バカトリオ的な魅力を醸している」
てるお 「原作ではブロディの奥さんとフーパーは不倫関係になるんだけど、スピはそんな昼メロみたいな設定はいらないと映画版ではナシにしたけど、賢明な判断だった」
たくお 「観客はそんなドロドロした人間関係を見たいわけじゃないしね」
てるお 「フーパーも原作ではサメに食われちゃうんだけど、スピは生き残らせた。さすがにその変更に原作者のピーター・ベンチリーは激怒したらしい」
たくお 「でも頑固者としても有名なスピは頑として譲らなかったと(笑)」
てるお 「やっぱり一番燃え!なシーンは3人とサメの初戦。威風堂々と現れたでっかいサメを追う3人だけど、スピはそれを楽しげに映すんだよ。なんか男たちのサメの追いかけっこを見ているような。何度観てもあそこはワクワクさせられる」
たくお 「ブロディがエサをやってるとザバーッと出てくるアングルも最高だし、船の上からサメのそのでかさを見せつけるショットも素晴らしすぎる。あのシーンのカメラワーク、音楽、リズムを崩さない編集、もう全部が完璧だよね」
てるお 「スピルバーグとジョン・ウィリアムスの才能が見事に結実したエキサイティングなシーンだわな。徐々に盛り上げていく音楽は観ている人を興奮させる作用がある(笑)」
たくお 「観客をエンディングまで一気に引っ張っていく吸引力抜群の演出は非の打ちどころがない。ホメすぎ?(笑)」
てるお 「あと、落ち込むブロディを見て幼い息子がマネするシーンも好き。この映画、好きなシーンがマジで多い」
たくお 「あそこにかかる音楽がまたいいんだよ。泣かせる!」
てるお 「大ヒットで調子に乗ったユニバーサルはシリーズ化を決定し、スピは2の監督も頼まれたけど『続編はやるべきではない』と拒否した」
たくお 「『ジョーズ2』は続編としては面白かったけどね。パワーアップ型続編としては成功作だと思う。もちろんジョン・ウィリアムス力のおかげもあったんだろうけど。ただし3、4は論外(笑)」
てるお 「『ジョーズ'87 復讐篇』の脚本を読んだスピルバーグが興奮して海に向けて銃を撃ちまくりたくなった、という逸話があったらしいけど本当か?」
たくお 「あまりにヒドイ脚本だったので誰かを撃ち殺したくなったとか(笑)? そんなに興奮したんなら監督かプロデュースを引き受けてるでしょ」
てるお 「ま、そうだわな」
たくお 「1度でいいから劇場の大スクリーンで1作目を観たい。午前十時の映画祭でもいいからさ」
てるお 「最終となる第3回のラインナップには残念ながら入ってないね。ニュープリント版でのリバイバル公開頼む!」
たくお 「でも来年には待望のブルーレイがアメリカでリリースされる。現在、せっせとリストア中らしい」
てるお 「マジか!? その時はぜひ日テレの水曜ロードショー版の吹替版(ロイ・シャイダーを滝田裕介が吹き替えたバージョン)を入れてくれ! 絶対に!」
たくお 「へえ。そんなにいいの?」
てるお 「そもそも俺が『ジョーズ』にハマるきっかけになったのは81年に放送された水ロー版で、この吹き替え版を録画して何度も繰り返し観てた。北村和夫さんが吹き替えたクイントはオリジナル以上のシブさがあって、シビれるぐらいカッコイイんだよ。『署長さん、今度からパンツのヒモひっぱる時も相談してや~』(←知ってる人は知ってる名ゼリフ)って(笑)」
たくお 「吹き替えってアレンジによってはオリジナル以上に面白くなる時があるよね。これまで全部で3つの吹き替え放送があったみたい。『セブン』のBDにみたいに全部収録してくれたら最高なんだけどね」
てるお 「もし吹き替え全部入れてくれたら保存用に2枚買ってもいい(笑)。『刑事コロンボ』のBD-BOXだってマニア泣かせの仕様でリリースしたんだから、ジェネオン・ユニバーサルさん、マジでたのんますよ!」
●ここスピ!=オープニング・クレジット/ジョン・ウィリアムスの音楽全般/死体が出てくるビックリ演出/サメVS男たちの攻防(特に1回戦)/そしてキメの『smile,son of a bitch!』
●ここダメ!=ない。強いて言うならば、本物のホオジロザメはあんなにしつこく襲ってこない(笑)
ちょっぴり大人になったスピの演出が冴える会心作
未知との遭遇 ★★★★★
1977年/コロムビア映画
たくお 「スピルバーグ、3本目のホームラン映画が初のSFとなる本作。幼少期から空、宇宙、UFOへの憧れを強く抱いていたスピの<願い>が叶った作品ともいえる」
てるお 「小学校の時に初めて観たんだけど、正直、同じ年に公開された『スター・ウォーズ』のほうがやっぱり単純なエンタメ映画として強く惹かれてた。でも向こうは万人ウケするSF冒険活劇に対し、こっちは大人向けの上質なSFドラマであり、同じSFでも両作はいたって対照的な位置にある」
たくお 「日本では同じ年に本作と『SW』が公開されてたのか。今考えたらすごい年だよね」
てるお 「『激突!』も『ジョーズ』も殺人的スケジュールの中でスピはその非凡な演出力でなんとか完成させたけど、本作はより深い愛情と作品的ゆとりを感じさせるよね」
たくお 「そうなんだよ。なんか名匠が撮ったような貫禄ある大作に仕上がってる。まだ30歳にもなってない若造なのに(笑)」
てるお 「当時としては最大級のスタジオを使って撮られたクライマックスのUFOとの交信シーンはまさに音と光のイリュージョン。これこそ<体感する>にふわさわしい名場面だ」
たくお 「楽器で異星人と見事な調和を奏でるシーンは観ているこっちも楽しくなるんだわ。劇中のメリンダ・ディロンのように」
てるお 「めったに脚本を書かないスピが珍しく本作では脚本も手掛けている。父親不在の家庭不和はスピらしいエピソードだと思った」
たくお 「父親不在、家庭不和はスピ映画のテーマでもあるしね。異星人とのファースト・コンタクトよりも家族のエピソードが印象に残った人も多かったみたいよ」
てるお 「何かに取り憑かれたようにマッシュポテトをイジる父親を見て、妻や子供が泣いてしまうシーンは何度観ても胸が締めつけられる」
たくお 「そしてその異常性がドンドンエスカレートしていって、ついには家の中に巨大な土の山が(笑)」
てるお 「あのシーンの撮り方がうまい。最初は泥だらけのロイを映してカメラがパンするとでっかい土山が出てくる。その山が何なのか、初めは観客にも分からない。で、ロイが奥さんと電話で話している最中にテレビのニュースでデビルズタワーがチラッと映る。山の正体が明らかになるあの場面の演出はもう完璧。それだけにロイとジリアンが本物のデビルズタワーを目の前にするシーンは感動するんだよ」
たくお 「ジョン・ウィリアムスもますます冴えわたった美しいメロディラインを聴かせてくれる。このテーマ曲を聴いてるとなんだか心が落ち着くんだよねえ~(笑)」
てるお 「5つの音だけで奏でるテーマ曲がもう素晴らしすぎ。ウィリアムスは当初は7つの音での構成を考えてたけど、スピはどうしても5つの音でやってほしいと譲らなかった」
たくお 「おお、ここにも頑固者スピのこだわりが(笑)」
てるお 「異星人はもはや一般的になりつつあるグレイタイプ。でもどこか子供のような感じでニコッと笑う表情がまたいいんだよ」
たくお 「初めて友愛精神をもった異星人をスクリーンに登場させ、観客を泣かせてきたスピが28年後に凡作エイリアン映画『宇宙戦争』を撮るとはこの時は誰も思わなかっただろうな(笑)」
てるお 「<初めて>といえば、再編集したバージョンで改めて上映したことも話題になった。スタジオがマザーシップ内部を見せることを条件にスピに『特別編』の製作許可を出し、3年後に公開。今でこそDVD、BDでファイナル・カット版を含めて3バージョンとも観られるけど、当時のVHSやLDは長い間オリジナル版は封印されてきた」
たくお 「そこがルーカスと違うところだよな。スピちゃん、エライ!(笑)」
てるお 「LDでスペシャル・コレクション版が発売された時、オリジナル版が初収録されたのはかなり貴重だった。しかもチャプター・プログラムで両方再生できる仕組みになってて、BDやDVDにもない膨大なフォト・ギャラリーなども収録されており、今でも処分できないお宝ソフトなんだよね」
たくお 「僕は特別編で追加されたマザーシップの内部はあまり見たくなかったなあ。なんか貧弱なシャンデリアを見せられてる感じ(笑)。特別編で追加されたシーンで好きなのは、ゴビ砂漠に横たわる巨大な船のシーンだね」
てるお 「同感。あのマザーシップは神秘的な存在として描かれているから、あそこまで見せる必要はなかった。スピも内部を見せることにはずっと反対してて、ディレクターズ・カットであるファイナル・カット版からは再び削除している。でも、エンドクレジットの音楽は特別編の『星に願いを』が流れるバージョンのほうが好きだけどね」
たくお 「<大人の演出>を見せたスピの会心作だと思うよ。30歳の若造なのに(笑)」
てるお 「ヒット作が少なかったコロムビア映画史上最大のヒット作(当時)となり、経営が傾きかけてた同社を救った」
たくお 「本作がもしコケてたら間違いなく破産だったらしいね」
てるお 「もう1つスゴイと思ったのは『未知との遭遇』の邦題を考えた日本の配給会社の人。確かに『第三種接近遭遇』じゃよく分からんもんな」
●ここスピ!=オープニング・タイトル/ロイがデビルズタワーに取り憑かれる場面/ロイ、ついに本物のデビルズタワーとご対面/クライマックスの人類と異星人とのファースト・コンタクト
●ここダメ!=マザーシップの内部シーン(特別編)
エロいナンシー・アレンと音楽に救われた戦争コメディ
1941 ★★★☆
1979年/ユニバーサル映画・コロムビア映画
たくお 「この映画を観てると、スピルバーグの少年時代が垣間見えてくる気がするんだけど。なんかイタズラっ子だったというか、やんちゃ坊主だったというか」
てるお 「スピ・ママによると、幼少期から映画漬けで1人で遊ぶような大人しい子だったらしいよ。でもその反動もあってか(?)、本作での破壊願望は恐ろしいものがあるな(笑)」
たくお 「オモチャ箱をひっくり返したようなドタバタで、話が進むにつれてその破壊描写はどんどん過激かつ大味になっていく(笑)」
てるお 「クライマックスなんか『収拾がつかなくてもうどうにでもなっちまえ!』的な開き直りすら感じる」
たくお 「今観てもほとんど笑えないギャグのオンパレードなんだけど、それでもジョン・ベルーシやネッド・ビーティ、三船敏郎、ダン・エイクロイドらを揃えただけでもスゴイと思うよ。彼らのキャラだけでもってるような映画(笑)」
てるお 「♪も~しもし、カメよ、カメさんよお~、ぐらいしか笑わなかったな(苦笑)」
たくお 「とにかく日本軍のおマヌケっぷりには日本人としてはコメディとして割り切っても笑えないものがあるけどね。ま、アメ公どもも全員バカしかいなんだけど(笑)」
てるお 「現場ではハリウッド特有の不適切な日本人描写が多かったため、三船さんが直接スピにアドバイスしたらしいよ」
たくお 「アドバイスしてこの出来ですか?(笑)」
てるお 「ま、ギャグを楽しむよりもその破壊っぷりをどう楽しむかでしょ。そこにハマれない人は多分楽しめないだろうね」
たくお 「ミニチュア戦闘機を使った市街戦や、踊る大観覧車、豪邸ぶっ壊しなどなど、あまりの巨費にユニバーサルとコロンビアの2社による共同製作となったんだけど、3500万ドル(当時約70億円)も費やして米国内では3100万ドルの赤字。最終的には世界興収で9200万ドル稼いでるけど、スピルバーグ映画としてはコケてしまった」
てるお 「<希代のヒットメーカー>から一転して<ムダ遣いの映画監督>のレッテルを貼られてしまったスピ。てんやわんやな映画を作って、一番てんやわんやしてたのはスピだったろうね(笑)」
たくお 「でも再評価するファンも多いよ」
てるお 「DVDで何度も観たくなるのがダンス・シーン。あそこの演出だけはピカイチね」
たくお 「ジョン・ベルーシが愛機に乗りながら迷ってコーラを飲むところと、サイドカーを切り離された男女がタマゴに突っ込む場面も好きだな。あ、あと『YOU!』『YOU!』『YOU!』もね(笑)」
てるお 「丁度、思春期だった俺としてはエロいナンシー・アレンで十分にオカズになった(笑)」
たくお 「『1941』をエロ目的で観るなよ(笑)」
てるお 「公開時は118分だったけど、ソフトは約30分長い完全版でリリースされており、今はこの完全版がディレクターズ・カットになってる」
たくお 「日本兵を小バカにしたシーンがめっちゃ増えてる。笑えないギャグが増強されてるから完全版はすごく間延び感がある(笑)」
てるお 「なんだかんだ言いながらこの映画、キライじゃないけど」
たくお 「本作が救いようのない駄作にならなかったのはジョン・ウィリアムスの音楽のおかげでしょ」
てるお 「それはある。サントラレビュー
でも書いたけど、映画はイマイチだけど音楽は傑作! ウィリアムスはやっぱ<神>だね(笑)」
●ここスピ!=『ジョーズ』のパロディ/ダンス・シーン/ジョン・ベルーシ/回転する大観覧車/ラストで壊れる豪邸/ジョン・ウィリアムスの音楽全般
●ここダメ!=スベリまくりのほとんどのギャグ/おバカすぎる日本兵/三船敏郎のもったいない使い方