面白い映画には愛を捧げ そうでない映画には鉄槌を下す
たいむぽっかんの
ぶっちゃけCINE TALK!!!
●今日のぶっちゃけなシネ言
「映画料金の増税便乗値上げ、反対ーーーーーー!!!!」
シネトーク188
『47RONIN』
(3D・字幕版)
47 RONIN
監督:カール・リンシュ 脚本:クリス・モーガン/ホセイン・アミニ
出演:キアヌ・リーヴス/真田広之/浅野忠信/菊地凛子/柴咲コウ/赤西仁/田中泯/ケイリー=ヒロユキ・タガワ
2013年米/ユニバーサル/121分/シネマスコープサイズ/3D/東宝東和配給(2013年12月6日公開)
●作品解説
ハリウッドが日本の古典復讐譚“忠臣蔵”をモチーフに、日米の豪華キャストの共演で描く異色の3Dアクション・ファンタジー・エンタテインメント大作。
将軍・徳川綱吉が治める鎖国時代の日本。かつて赤穂藩藩主・浅野内匠頭に命を救われた混血の異人カイ。浅野の娘ミカと心を通わつつも、浅野への忠義を誓い、領地の片隅で一人静かに暮らしていた。そんな中、赤穂藩の追い落としを目論む隣国の藩主・吉良上野介は、謎の妖術使いミヅキと共に奸計を巡らせ、浅野に刃傷沙汰を起こさせてまんまとお家取り潰しに追い込むことに成功。さらに浅野の忠臣・大石内蔵助はじめ家臣たちは浪人となり、四散してしまう。一年後、大石は出島でオランダ人の奴隷となっていたカイを助け出すと、復讐への助太刀を要請する。こうして大石率いるわずか47人の赤穂浪士は、ついに吉良への仇討ちへと立ち上がるのだったが…。(all cinemaより)
こってりを頼んだのに超さっぱり味のラーメンが出てきた気分
四十七士討ち入りの12月14日に観てこそ盛り上がる映画だよねっ!と思って、丁度その日はTOHOシネマズの1000円デーだったし、近所のMOVIXは3D版は吹き替えしかやってなかったので、わざわざ有楽町の日劇1に出向いて3D字幕版を観に行ってやりました。
ていうか、ミスりました。事前にちゃんと調べなかったボクが悪いんだけどさ、コレ、全編英語劇だったのか・・・・。 てっきり『ラスト サムライ』のように、外人だけが英語を、日本人は日本語+たまに英語を喋るのかと思ってたんだが・・・・。まさか日常会話まで全部歌ってるとは思ってもみなかった『レ・ミゼラブル』以来の衝撃。
なので、全編英語劇の『忠臣蔵』は終始違和感ビンビンでございました。しかも吹き替えは日本人役は本人がやってるんでしょ? だったらなおさら吹き替えで観れば良かった・・・・と、大いに後悔。
それにしても公開8日目だったのに、しかも土曜日だったのに、なんちゅう人の少なさ・・・・。944席もある大スクリーンなのに、20人いたかどうか・・・・。銀座の宝くじ売り場は長蛇の列だったのに(関係ねー)。
この作品、二度の公開延期のスッタモンダはあったけど、大々的な宣伝を投下して張り切って日本先行公開したにも関わらず、初登場6位という関係者が青ざめるスタートを切り、配給会社は5億も稼げていない悲惨な状況をひた隠しにしているようです(別に隠してはいねーか)。追って公開された米国でも空振りで、1億7500万ドルの製作費に対し世界中で1億3800万ドルしか稼げておらず、1億7500万ドル丸々を損失計上したユニバーサル(とはいえ『怪盗グルーとミニオン危機一発』などのヒット作が損失分を十分にカバーしたらしいけど)。日本の公式サイト
の「大ヒット上映中!」の文字があまりにも虚しいので消しといたほうがいいですよ。

いくら豪華な日米キャストを揃えたところで、今時、忠臣蔵映画で客を呼べるのか?とか、今のキアヌのスター性ってどーよ?とか、企画そのものに疑問の声が上がっていたことは事実。とはいえ個人的には「『忠臣蔵』+『ロード・オブ・ザ・リング』でしょ? 日本では絶対にやらないこういう映画をやるハリウッドってやっぱスゴイ!」と、真っ当な忠臣蔵映画というよりは、久々の“トンデモ大作”として密かに期待してたんですヨ。『忠臣蔵』にそれほど詳しくない私でも、『魔界転生』みたいな大々的にアレンジされたファンタジー・アドベンチャー時代劇に仕上がってたら、結構楽しめそう・・・・・な気がする・・・・・・かも・・・・・ぐらいの期待感はあったんですけどね~。
まず、忠臣蔵映画としては期待していなかったし、じゃあトンデモ映画としても楽しめたのかと言われたらそれほどでもねーし、ファンタジー映画としての見どころもそれほどねーしし、アドベンチャー映画としても全然胸躍れねーし、チームワーク映画としてもあんまし燃えてこねーし・・・・・・。
「この映画はダメダメなんだけど、ココだけは凄かった!」というホメポイントを見つけるのもひと苦労するような、突出した部分もないというね。つまり、色んな部分が中途半端で、薄っ! 全然ダメやんけ!というね。 もっとこってりなトンデモ忠臣蔵を見せんかい!
色々と面白くなりそうなファンタジー設定をしているから、もっと突拍子のない爆裂展開に突入する珍説『忠臣蔵』が観られるかと思うじゃないですか、フツーは。でも、そういう設定を話として全然活かそうとしないし、活かす努力もしていない。「設定」だけが一人歩きしちゃってる。
なによりキアヌ演じる架空の人物・カイのキャラとしての立ち位置が曖昧すぎて、物語を動かすような主人公にさほど見えない。コイツ、そこそこに強いんだけど、かといってみんなを引っ張っていくほどの活躍はしてないし。要は、何がしたいのかな、チミはっ!なんです。『忠臣蔵』の設定にとらわれすぎゆえ、主人公たちの行動心理が意味不明なことにもなってる。
そりゃ赤穂浪士の映画なんだから、青い目のRONINだけ目立たせちゃそれこそ『忠臣蔵』じゃないじゃん!って言うんだったら、初めからこんな中途半端なキャラ出さないでよ。 カイにもっとチームを統率するリーダー的な役目を担わせないと、何のために本作を企画したのか意味なくね?ということになってしまうんですヨ。虐げられた者たちが一念発起して強者に立ち向かう、という『忠臣蔵』になくてはならないカタルシスもそれほどなかったし・・・・。

浅野忠信演じる吉良の見どころのなさも、お口あんぐりモノで、せっかく真田広之 VS 浅野忠信という、日本人としては期待したくなる対決の見せ場を用意しておきながら、あの拍子抜け感は昨年公開の映画ではワースト級かも。 ま、浅野忠信が首チョンパされるので+5点サービスしてあげてもいいけどね。
もうひとつの拍子抜けキャラは、ごっつい鎧武者。さぞかし、鎧の下には想像を絶するおぞましい姿をしているんだろうなあ~、( ^ω^)ワクワク!だったのにさ~。クライマックスで再登場したと思いきや、即爆死という・・・・。 誰か、この新人監督にアクション映画のイロハを教えてやれ!
『スター・ウォーズ』のカンティーナ酒場にいるエイリアンにしか見えないTENGUさんから刀を頂戴するシーン にしたって、RONINたちが力を合わせて並外れた力を持つTENGUどもに太刀打ちすることによって、キャラに深みを与えることもできたわけですよ。しかし他の連中は外でくっちゃべって待ってるだけだし・・・。バイブレーターのようにプルプルと震わせているTENGA・・・・・あ、違う、TENGUさんはちょっと愛らしかったけど、特に印象に残る見せ場もないまま終了。
第一、彼らから受け取ったその刀がそれほど大した効力を発揮しなかったのもどーかと思うわけで、イナズマがビシャーッと落ちてきて敵をドヒャーッと蹴散らすとかさ、それぐらいの派手な見せ場を持ってきなさいよっ。

赤穂浪士が47人いたのかどうかなんてもうどうでもよくて、印象に残ったキャラが少なすぎ。あのおデブちゃんぐらいしか思い出せん。なかなかの愛されキャラだったのになにも戦に行く前に死なせることねーじゃん。この監督さん、キャラの動かし方がヘタすぎです。
お姫の柴咲コウは意外と英語がお上手!という以外、特に印象なかったけど、『パシフィック・リム』以来、個人的には評価アゲアゲ中の菊地凛子のフェロモンもののけ
は です。あのエロエロ感がたまらん。ビヨ~ンと伸びる髪でチョメチョメなことをしてもらいたいなあ、とか思ったり(←バカ)。ミヅキのスピンオフとか作ってほしいですぞ。
真田広之は『ウルヴァリン:SAMURAI』よりもイイ働きをしてたし、ケイリー=ヒロユキ・タガワの将軍綱吉もなかなか悪くないですぞ(実は途中まで気づかなかった)。ただ、綱吉が最後に赤穂浪士を「アッパレじゃ!」とホメたたえる理由がさっぱり意味不明だったけど。
クライマックスの決戦シーンも明らかに盛り上げ不足。全員は無理としても、赤穂浪士の各キャラが頑張っている姿をもっと情感たっぷりに描いていれば、その後の切腹シーンだってもうちょっと感動できたはず。ていうか、切腹シーンも演出もヌルすぎっ。RONINとして戦い抜いた彼らの生きざまがほとんど伝わってこないまま終わっちゃうのはどう考えてもダメでしょ。
アクションやスペクタクル・シーンの演出が既視感アリアリなのはもう言わずもがなで、せっかく3Dで時代劇をやるんだったら、ベタに矢を飛ばしてくるとか、ドラゴンとかのバケモノを飛び出させるとか、アクティブで楽しい3Dをもっと見せんかいっ! 期待した凛子ドラゴンも今ひとつ盛り上がらず。画面は暗くなるだけでストレスが溜まるので、2Dで十分でした。
お城とかの情景は昔の写実的な日本ではなく、夢に思い描いたファンタジー的なニッポンを意識して描いたと監督は言ってるけど、どう見てもチャイニー感満載です。アメリカ人はどうも日本と中国を一緒くたにしてしまう悪いクセがあるけど、そろそろ治したほうがいいよ、そういうとこ。そこに怒る日本人、結構いるから。 コレだったら『ロード・オブ・ザ・リング』の中つ国みたいに完全に架空の場所にしちゃったほうがまだ良かったかも。
元々、『忠臣蔵』は日本でも色々と設定を変えてきて、さまざまな形でメディア化されてきたもの。だったらハリウッド人が思い描く『忠臣蔵』を見せてやる!という意気込みが正直もっと欲しかったですねえ。それこそもっとイジくり回してもよかったし、「全然『忠臣蔵』じゃないけど、このヘンテコな『CHUSHINGURA』もイイかも」になる可能性だってあった。しかし、新人監督の明らかな力量不足と煮詰められていない脚本のせいで、想像を超えたイマジネーション豊かな時代劇を期待してたのに、全く超えてくれなかった。
このカール・リンシュという初耳の監督さん、CMでは色んな賞を獲っているようだから力量はあるんでしょう。CM出身の映画監督で思い出すのがデヴィッド・フィンチャー。デビュー作『エイリアン3』は失敗作だけど、ビジュアル・センスは長けていたし、「気鋭のビジュアリスト」を期待させるだけのオーラはあった。しかし、リンシュ監督は本作を観る限りでは、言われてるほどビジュアルに「洗練された感」があまり感じられないんですよ。
映画監督としての実力が未知数の彼に1億7500万ドルの巨費を出したユニバーサルの勝算なきギャンブルは、製作時からハリウッド中から危惧されていたようで、その不安はズバリ的中。次回作こそ、その持ち前のビジュアル・センスを遺憾なく発揮した作品を撮ってくれるんでしょうか。てか、こんだけ大コケしておいて次の仕事があるんでしょうか?
ニッポンのSAMURAI魂をちゃんとリスペクトしました!という心意気は買いたいけど、その志は空回り。2008年12月に企画の第一報が報じられて 以来、色んな意味で注目された作品でしたが、ザンネンな1作に終わっちゃいました。チャンチャン。
『47RONIN』 55点
●満足度料金/1000円
予告編
映画版の前日談を描いたモーション・コミック
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