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シネトーク178『清須会議』●どう見ても「三谷喜劇の真骨頂」ではないよなあ

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白い映画には愛を捧げラブラブ! そうでない映画には鉄槌を下すパンチ!
たいむぽっかん
ぶっちゃけCINE TALK!!!

●今日のぶっちゃけなシネ言

「上映中の館内で客が笑ってたり、泣いたりしてる姿を見せるCMに惑わされないぞ」




シネトーク178

『清須会議』




監督・原作・脚本:三谷幸喜 撮影:山本英夫 
出演:役所広司/大泉洋/小日向文世/佐藤浩市/妻夫木聡/浅野忠信/寺島進/でんでん/松山ケンイチ/伊勢谷友介/鈴木京香/中谷美紀/剛力彩芽/坂東巳之助/阿南健治/染谷将太


2013年/フジテレビ、東宝/138分/シネマスコープサイズ/東宝配給(2013年11月9日公開)


●作品解説
 『ザ・マジックアワー』『ステキな金縛り』の三谷幸喜監督による歴史群像エンタテインメント。織田信長の亡き後、その跡継ぎを決めるべく開かれた“清須会議”を舞台に、水面下で繰り広げられる柴田勝家と羽柴秀吉の激しい駆け引きの行方と、その心理戦に巻き込まれる人々の悲喜こもごもの人間模様を綴る。
 天正10年(1582年)。天下統一を目前にした織田信長が、本能寺の変で命を落とす。長男の忠信も討ち死にし、にわかに織田家の後継争いが勃発する。筆頭家老・柴田勝家と明智討伐の功労者・羽柴秀吉が後見に名乗りを上げ、それぞれ三男の信孝と次男の信雄を推して激しく対立する。そんな中、2人が共に秘かな思いを寄せるお市様は、秀吉への恨みを晴らすべく勝家に加勢、一方の秀吉は軍師・黒田官兵衛を使って様々な奸計を巡らせていく。互いに一歩も引かぬまま、いよいよ決戦の清須会議へと臨む勝家と秀吉だったが…。(all cinema より)



※ネタバレしてます! ご注意を!





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もっと三谷スパイスの効いた「清須会議」を開いてほしかった


そもそもボクは日本史はあまり好きではなくて、高校の時も赤点ギリギリで、織田なんちゃらとかなんちゃらの乱とか、そういうのを覚えるだけで精一杯でした。「いい国つくろう鎌倉幕府」とか「本能寺の変」ぐらいは知ってるけど、清須会議 」は聞いたことはあるという程度の認識。なので本作を観る前も「キャラが26人も出てくるのか、メンドくせ」という苦手意識があったんですが、実際に話を動かしていくのは役所広司と大泉洋の2人で、あとは小日向文世、佐藤浩市、妻夫木聡、坂東巳之助の4人がおもに絡んでくるという塩梅なので、それほどややこしい話でもなく、フツーに理解できたという感じ。ま、これから観る人は本能寺の変 」「柴田勝家 」「羽柴秀吉 」ぐらいは知っておいたほうが無難です、ハイ。


その『清須会議』は三谷監督が10歳の頃から興味のある題材だったようで、さらに17年ぶりに小説を書き下ろしている ほどだし、本作はまさにライフワーク的な作品なのでしょう。実に「構想40年」だそうで。ショック!
なので、いつもの「おちゃらけ」が前面に出た三谷コメディ映画ではなく、いたって「マジメ」をウリにした内容に仕上がっており、従来の三谷ファンも「なんか想像してたのと違う・・・」と戸惑った人が多かったようです。実際、ボクもその一人ですから。


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ぶっちゃけ、ボクは三谷幸喜の熱狂的なファンではないんですが、『古畑任三郎』のDVDは全巻揃えているほど好きだし、三谷映画も一応全部観ているので、「まあ、新作が出たら必ず観る作家さん」であることには違いないです。


三谷映画では初の時代劇ということもあり、それなりに期待して臨んだわけですけど・・・・・・なんだろうねえ、このハンパない残尿感は。シラー
ひどくつまらない・・・・ワケじゃないんだけど、でもあまり面白くもない・・・・というね。
モヤっとボールをいっぱい三谷監督に投げたくなるようなこの感じ、分かります? 「歴史エンタテインメント!」と宣伝で謳われているほどの「エンタテインメント」感をあんまし感じられなかった。


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「映画的な作り」としては、これまでのどの三谷映画よりも抜きん出た出来映えだと思います。それは俳優さんの熱演、力演だったり、しっかりと魅せてくれる画だったり、作り込まれた衣装や美術セットだったり・・・。ただ、個々の部分が良くても、それが作品として素晴らしいのかと言われたら「いや、別にそうでもない」というね。


もっというと、宣伝が良くない。TVスポットで「三谷幸喜の最高傑作!」「三谷喜劇の真骨頂」 って散々煽ってるけど、両方とも当てはまってないと思うんですが。てか、三谷監督の新作を出すたびにフジテレビが「最高傑作!」ってPRしてるけど、その映画が傑作かどうかなんて観客が決めることであって、作り手側が押し付けるのってなんか違うんじゃないか? その押し付けがましい宣伝に若干引いたのもあって、期待値が落ちちゃったりするんです。むっ


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ていうか、コレ、「三谷喜劇の真骨頂」ですか? 真骨頂=「そのものが本来もっている姿」。でも三谷監督本人は「今までにやったことがないものをやってみた。冒険をしてみた」と言ってるんです。矛盾してません? ドタバタふうコメディで宣伝しておきながら、買ったパンフの監督インタビューで「今回は大爆笑コメディではありません。ギャグらしいギャグもありません」と言われても困るわけで。

「これまでとは違う路線の三谷映画」なのに、宣伝は「これまで路線の三谷映画」なのだから、そりゃファンが「なんか思ってたのと違う」と違和感を感じるのは当たり前であって、それが総体的な評価に繋がってる気もするんですよ。


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何がつまらないかって、会議を題材にした作品なのに、肝心の「駆け引き」の部分や「会話劇」があまり面白くなってくれないんです。むっ


誰もが知っている史実通りの展開をちょっとコミカルふうに見せているだけなので、観客が想定してた以上のものがなく、予想を裏切るような面白さがない。史実だからヘタに脚色したくないという気持ちも分かるけど、すでに原作自体が三谷監督の視点によるちょっとイジった『清須会議』なのだから、喜劇、エンタテインメントをウリにする映画版なら、もっと「ウソ」や「フィクション」の部分を織り交ぜてイジリまくって、映画的に楽しませれくれたほうがずっと良くないか? マジメに歴史考察するだけだったらNHKのドキュメンタリーに任せればいいのだし、ここは三谷監督が自身のスパイスを注いで、もっと「歴史を捻じ曲げた」面白さが欲しかった。結末は史実通りにしたとしても「オレの『清須会議』を見せちゃる!」という挑戦が見たかった。タランティーノが『イングロリアス・バスターズ』でやったように「歴史歪曲エンタメ映画」として作るか、歴史コメディの秀作『モンティ・パイソン・アンド・ホーリー・グレイル』のようなもっとコメディ・スタイルヨリでも良かったのでは。


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「喜劇」の部分にしてもそれほどゲラゲラと笑えるものはほとんどなく、クスッという程度。
時代劇なのにちょいちょい「いいよ」「聞いた?」「ぶっちゃけ」などの現代用語が出てくるのも、三谷ふうなおちゃらけ演出として許容できるけど、でもそれってどっちかというと舞台向きな気がする。映画でそれをやられると「乾いた笑い」しか起こらないんですよ。「フィクションとしての笑い」と「史実としてのリアリティ」のバランスの悪さに歯がゆさを感じて、コメディ・シーンでもあんまり笑えず。シラー 特に更科六兵衛が唐突にゲスト出演するファンサービスでは観客からちょっと笑い声が起こってたけど、そこでもボクは「乾いた笑い」でしたね。つまり「ふざけるならもっと徹底してふざけてくれプンプン「マジメに笑わせるならもっとマジメに演出してよプンプンなんですよ。いつもよりシリアスめに作っておいて、小手先だけのふざけたギャグほどノイズになってしまうものはないです。観ている方としては、三谷監督がシリアス歴史劇に対する照れを、おちゃらけ笑いで誤魔化しているようにしか思えなくて・・・。
だからこんなバランスの悪い作品になっちゃったのかなあ、と。


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ただ、お笑い要員のバカ殿妻夫木くんのああいうデフォルメ的な扱いはヨカったですけどね。彼のスピンオフ作品はちょっと観たいかも、と思ったし。


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映画としてハチきれてくれないもどかしさもあり、なんか全体的にのっぺりした感じなのもちょいストレスだったし。演出的に間延びしていて、どこがハイライトなのかよく分からなくて、どこを面白がっていいか提示してくれないのも不親切だなあ、と。
数少ない見せ場の1つである「旗取り合戦」だってもっと面白くできたんじゃないの? せっかくああいう場面を持ってきて大して盛り上がらないまま次のシーンにいくものだから「なんだかなあ」だし。


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勝家とお市による一発大逆転のエンディングもなんかスカッとしないし、逆に「なんか後味悪い」感だけが付いて回るのもいかがなものか。ここは痛快感をもっと打ち出した演出にしないと! 初めから勝敗が分かっている勝負をどうやって面白おかしく、もしくは観客にどう興味を持ってもらえるかという、演出としての計算がされないまま話をダラダラと語られてもそりゃ面白くならないですヨ。むっ


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で、最近の三谷映画にはもれなく「冗長感」も付いてきて、正直、ありがた迷惑なんだけど、本作の冗長さは三谷映画史上トップクラス。もっとコンパクトにしたら面白くなるのにどんどん長くなってきている。『THE 有頂天ホテル』以降の作品はどれも135分以上もあって、しかもそれほど重要でない余計なシーンが多く、結果的に作品としてシマリがなくなって傑作になり損ねている感があるんデス。シラー



会議に出席するために駆けつける滝川一益のエピソードもストーリー上は大した効果を生んでないし、堀秀政のシーンもはたしているのか疑問。天海祐希のくノ一襲撃場面なんて肩透かしもいいところで、せっかく出てもらったんだからこのシーンも使わないとモッタイナイというレベルでしかない。伊勢谷友介演じる織田三十郎信包もキャラとして活かせないんだったら、セリフだけの処理でいいんじゃね?と思ってしまう。


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会議が終わっても余計なエピソードが色々と盛り込まれ、せっかくの会議シーンのクライマックス感を台無しにしているんです。コレってモッタイなくないですか? 三谷監督は史実エピソードをアレもコレも入れようとして、結局、散漫になってブサイクな作品になっちゃってる。歴史エンタテインメントを謳うのであるならばもっと尺を刈り込んで、スマートに仕上げたほうがいい。絶対に138分もいらないし、もう30分削ってもいい。長すぎず短すぎない、できれば105分ぐらいがベスト。にひひ



で、これも三谷映画によく感じることで、ストーリーやアイデアを聞くと「なんか面白そう」って初めはそう思うんだけど、そのアイデアが今ひとつ作品に結実してない感がある。話として「消化」しきれておらず、映画として「昇華」してくれないというもどかしさがずーっとあって。いつも感じる「残尿感」の原因がコレなんです。だから三谷監督ってどうしても「アイデア先行型クリエイター」というイメージが拭えない。


「消化」と「昇華」が上手くいったのは、監督デビュー作の『ラヂオの時間』だけじゃないか? あの作品はちゃんと話として魅せてくれてたし、テンポもいいし、キャラもイキイキしてた。唯一、冗長感のない作品だったし。べーっだ! で、シメもちゃんと効いてたしね。


尺を2時間以内に収め、史実と虚構を織り交ぜた笑いのつるべ打ちストーリーにしたほうが、観客ももっとのめり込めたはずだし、「結局、実際の清須会議ってどうだったの?」と興味も持ってもらえたと思うんです。


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ストーリーはかなり残念だったけど、先述した「映画的な作り」はすごくイイ仕事をしてます。


種田陽平氏のセット美術は特筆に値するし、黒澤和子氏の衣装デザインも素晴らしい。この2つが組み合わさっただけでちゃんと「画」になるというね。特に会議シーンでの本格時代劇らしい風格ある画はいつもの三谷映画ではないようなズッシリした重厚感があり、ここは種田氏と撮影の山本英夫氏の手腕の賜物。田園風景や青々とした空とかもしっかりとスクリーン映えしてました。グッド! この「映画的な作り」をおろそかにしてたら、本当に救いようのない作品になってたかも。


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キャラ人数はムダに多いですが、主要キャラはいずれも魅せてくれてました。


ちょっとオツムが弱い典型的な武将タイプの勝家を役所広司が演じるとやっぱりサマになっているし、容姿はカッコイイのにちょっとバカっぽいというギャップも面白かった。本当はねずみ男タイプで天下を取る男には到底見えない秀吉を、“ねずみ男”の大泉洋が演じることで「チャラ男なんだけどズル賢い策略家感」がちゃんと出ている。2人の間で揺れ動く丹羽役の小日向文世の“陰で支える”存在感も素晴らしかった。
忍者に襲われた秀吉が勝家の部屋に逃げ込んで2人が初めて意思疎通する会話シーンとか、お歯黒のゴーリキが不敵な笑みを浮かべて真意を明かすシーンの緊迫感もヨカッたです。彼女のあのニヤリ顔だけで十分にインパクトあり。にひひ


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話に大して絡んでこない脇役でも人気スターを使うその贅沢三昧が三谷映画の醍醐味、魅力なのかもしれないけど、個人的にはこの見せ方に飽きてきたのも事実。知名度のある俳優を起用することで「このキャラはひょっとして重要な役どころなのでは?」と思って構えていると、全然そうじゃなかったというガッカリ感ももれなく付いてくる時があって、人気俳優のムダな起用が逆にキャラとして若干のノイズになってしまっているんです。シラー なのでこれからは著名なスターの起用はメインの重要キャラだけにしてください。




かつて飛ぶ鳥を落とす勢いだったスピルバーグや宮崎駿らヒットメーカーは、みんな年をとっちゃうとヘンに落ち着きが出てきて、昔のような「心地よい気持ちで映画館を後にできる映画」とか「何度も観たくなる作品」をなかなか見せてくれなくなって寂しいなあという思いに駆られる時がある。『リンカーン』も『風立ちぬ』も確かに良作だけど、何度も観たい映画ではないし・・・・。
まだ52歳の三谷幸喜監督はまだまだそんな年じゃない。監督自身、インタビューで「ただただ面白い映画を撮るのが夢なんだけどそれはまだ先だなという気がしている」と答えているので、次回作は「理屈抜きでただただ楽しい105分の映画」が観られることに期待してマス。にひひ


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グッド!ココGOOD!  重厚感のあるセット美術/衣装デザイン/山本英夫撮影監督による映像/歴史に詳しくなくても話は分かる/オツムの弱い役所広司/バカなフリをした策略家・大泉洋/陰で支える小日向文世/バカ殿・妻夫木聡/お歯黒・剛力彩芽のニヤケ顔
爆弾ココBOMB!  駆け引きや会話劇としての面白さが足りない/全体的に冗長で散漫/笑いとシリアスのバランスが悪く、波長が合わない/クライマックスの会議後のエピソードが無駄に長い/一部キャストの無駄遣い/アイデアが作品に結実していない/更科六兵衛のゲスト出演/TVスポットなどの宣伝に違和感




『清須会議』 55点


●満足度料金/1000円 シラー







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