面白い映画には愛を捧げ そうでない映画には鉄槌を下す
たいむぽっかんの
ぶっちゃけCINE TALK!!!
●今日のぶっちゃけなシネ言
「IMAXでは映画泥棒のCMがないから有難い」
シネトーク171
『ローン・レンジャー』
THE LONE RANGER
監督・製作:ゴア・ヴァービンスキー 製作:ジェリー・ブラッカイマー 製作総指揮・出演:ジョニー・デップ 音楽:ハンス・ジマー
出演:アーミー・ハマー/トム・ウィルキンソン/ウィリアム・フィクトナー/ルース・ウィルソン/バリー・ペッパー/ヘレナ・ボナム=カーター/ジェームズ・バッジ・デール/ブライアント・プリンス
2013年米/ウォルト・ディズニー/150分/シネマスコープサイズ/ウォルト・ディズニー・ジャパン配給(2013年8月2日公開)
●作品解説
ラジオドラマや往年のTVシリーズで知られる『ローン・レンジャー』を『パイレーツ・オブ・カリビアン』のスタッフ&ジョニー・デップ主演で大型映画化した西部劇エンタテインメント。
西部開拓時代のアメリカ。テキサス・レンジャーの兄を無法者ブッチ率いる一味に惨殺され、自らも重傷を負った検事のジョン・リードの前に、一人のネイティブ・アメリカン、トントが現れる。彼の聖なる力で死の淵から甦ったジョンは兄の仇を討つべく、そして正義のためにマスクをしたヒーロー、ローン・レンジャーとなってトントと共にブッチを追う。
※ネタバレしてます! ご注意を!
ハンパない冗長感!せめて2時間以内にしてくれや!!
そもそもオリジナルのTVシリーズは観てないし、「またジョニデの白塗り顔芸映画かよ。もう飽きた」とちょっと半笑いしてた部分もあったし、正直、夏映画の中での期待値ランキングはかなり下だったんです。アメリカでは大コケしたというニュースも伝わってきて、なおさら興味もてねー、みたいな。
ま、期待値が低かったせいもあってか、思ったよりも面白かったですよ・・・・・、ただ・・・・・ただね、観たら9割以上の人がそう感じるであろう、大いなる不満。はい、皆さん、いいですか、せーの「な・が・す・ぎ!」
この映画、無駄に2時間30分もあるんです。なんなんでしょうかね、2億1500万ドルという巨費を費やした作品だから、ちょっとでも長くして“大作感”を出そうとしたんでしょうか。いやいや1日の上映回数のことを考えたら長時間映画は興収的にも不利なんですけどね。170分の長尺無駄映画『パイレーツ・オブ・カリビアン/ワールド・エンド』の時にも感じた「長時間拘束拷問」再び!なんです。
で、観た人の大半は「最初と最後が面白かったねえ」「中盤、すごいタルなかった?」と口々にして劇場を後にするわけですが、ハイ、ボクもその通りだと思いました。
見るべきところって、最初のドタバタとクライマックスのたたみかける超絶大列車アクション!だけなんですヨ、正直なところ。
普通なら中盤にもハイライト・シーン的な見せ場を盛ってくるんだけどそれもないし、ジョンがローン・レンジャーになるまでの経緯が長すぎとか、トントとジョンの大して面白くない掛け合いとか、トントのしんみりした過去のエピソードとか、ジョンとレベッカのどーでもいい恋愛チックなお話とか、悪党とその手下のやり取りとか、そのへんはサクッと描くべき場面をダラダラと見せるので、とにかくテンポが超絶的に悪い。絶対に2時間30分も要らないんです、この映画。首まで埋められてサソリの大群に襲われちゃうところとか、多少は面白くなりそうなシーンはいくつかあったけど、大して本筋と関係ないし・・・・。
何度「もっとサクサクやってよ!」と心の中で呟いたことか。夏のビッグバジェット映画がコレでは困りますヨ。
元々、この映画、製作段階からドタバタしてて、紆余曲折の末、なんとか完成に至ったというね。このチグハグした作品の出来からして、製作中のドタバタが多少なりとも影響してるんじゃないか?と思ったり・・・・。当初はコロンビアが中規模な作品として企画していたものの、結局製作にまで至らず、権利がディズニーに移り、ビッグバジェット・ムービーとして製作。しかしSF西部劇『カウボーイ&エイリアン』がコケたことにディズニーが難色を示し、2億5000万ドルのバカ高い製作費に「待った」を出し、2011年8月、製作は一旦中止に。ジョニデ、監督、ブラッカイマーのギャラ減額、列車アクション・シーンをいくつかカットするなど、削れるところを削っても結局、2憶ドル以内に抑えることは出来なかった。
だからドハデなアクションはオープニングとクライマックスしかできなかった・・・・・ということなのかもしれません。
ローン・レンジャーとなる主人公ジョンもあんまり魅力的な人物とは言い難い。検事という顔を持つジョンは「どんな悪党も法で裁く」というヒーローにしては結構カタブツな考えの持ち主で、悪霊ハンターのトントと出会ったからといって彼に感化されて・・・・という展開もあるわけでもなく、最後までカタブツなキャラであんまし面白くならないし、共感もできない。そのわりには、橋を爆破したり、銀行強盗をしたりと、キャラとしてもブレまくりなんでよく分からないんですわ。で、クライマックスで「ハイヤア~!」と馬を駆って大暴れすることでやっとキャラとしての魅力が若干増すというね。遅すぎるわ! そもそもローン・レンジャーというマスクのヒーローになったことによる葛藤の変化も大してないし、さほど成長もしてないから、やっぱり魅力薄なんですわ。
ジョニデの変人っぷりは相変わらずの安定クオリティなのでそこはファンとしても楽しめるけど、ジョンとトントのどーでもいい掛け合いは、ホント、どーでもいいレベルなので、段々イライラしてくる。 バディムービーというスタイルを取るなら、最低でも2人が愛おしくなったり、感情移入したり、また彼らの活躍が見たい!と思わせるような演出にしないといけないのに、全然そうなってない。ヴァービンスキー監督のバディ演出はヘタです。バディムービーの最高傑作『ミッドナイト・ラン』を参考にしなさい。
ちなみにジョニデは今年で50歳。27歳のアーミー・ハマーとは23歳差なのに思ったより<対等な関係>が築けているのは、ジョニデがあんまり年相応に見えないからか。
義足に銃を仕込むやり手の女主人のヘレナ・ボナム=カーターも一体何のために出てきたのかよく分からないキャラで、正直、彼女のシーンは全カットしても全く問題なし。クライマックスで銃をブッ放してドカーン!がやりたかっただけでしょ?としか思えないようなキャラの無駄遣い。
人間キャラがこのザマなので、白馬のシルバーがキャラ的に一番面白かったたりする。 『塔の上のラプンツェル』に出てきたマキシマスを実写化するとまさにこんな感じで、シルバーが人間以上の活躍をするので、いっそのことコイツを主人公にしてドタバタ版『戦火の馬』みたいな映画にしちゃったほうがもっと面白くなったはず。
人間キャラで一番ヨカったのはウィリアム・フィクトナー演じる悪党ブッチ。心臓をエグり取る残忍なワルっぷり感が素晴らしく(とはいえあくまでもディズニー映画なので『インディ・ジョーンズ 魔宮の伝説』のような心臓わしづかみ描写はないけどね)、顔の生々しい傷も『プラトーン』のトム・ベレンジャーを思い出すし。『ダークナイト』でジョーカーに爆弾をくわえさせられた情けない男の姿はここにはないです。
トントの過去が明かされる場面では<インディアンの闇の歴史>が描かれ、急にしんみりしたシリアスな展開になり、作品のトーンが変わっちゃうのもいただけない。作り手が『ダンス・ウィズ・ウルブズ』的な要素を入れたかったのかは知らないけど、そこはもっとさりげなく描けばいいものを、またクドいぐらいに描くから鈍重感が増していく。
現代=1933年のシーンに何度も戻る演出もブサイクすぎて、観る側の集中力がプッツリ途切れてしまい、明らかにテンポを悪くしている。ジョニデがせっかく老けメイクをしたんだから何度も見てやって!という作り手(←特に製作も絡んでいるジョニデ本人)の浅い演出意図が見え隠れする。 1933年のシーンなんか冒頭とエンディングだけで十分ですよ。
とはいえ、これらの不評ポイント、ダメダメポイントをチャラにしてくれるのがラスト11分の“ウィリアム・テル序曲大パニック!”の巻ね。 あの曲が流れると、小学校の運動会か、『オレたちひょうきん族』か、『時計じかけのオレンジ』の3Pシーンを思い出しちゃうんだけど
、やっぱり血が騒ぎますなあ~。これまでずっと貧乏ゆすりばかりしてたボクの足が「ウィリアム・テル序曲」のリズムに合わせて動かしているんですよ。
このシーンの曲を聴きたいためだけにMP3サントラをダウンロードしちゃいましたからね。
間違いなく映画史に残る列車アクションの最高峰と断言できるし、これほど「ウィリアム・テル序曲」と完全一致したアクションは観たことがない。 懐かしいドタバタアニメを実写にしたらこんな感じ、というテンションでずっと見せてくれるので、否応なく童心に戻って楽しんじゃった人も多いのでは。白馬シルバーが、ローン・レンジャーが、トントが流麗なリズムに乗って華麗なアクションで思う存分に魅せてくれるから、これまでの不満は一気に吹っ飛んじゃいましたヨ。
このクライマックスだけ、あと3回は観たい。ただね、爆破された橋から列車が豪快に落ちていくオチが予告編でネタバレしてたのはいただけない。最近の予告編はイイトコ見せすぎ。
この痛快なクライマックスが退屈で冗長な2時間15分を我慢してくれた観客へのご褒美だと思ったら「そんなに悪くない映画かもなあ」と、誤魔化されちゃっている人もいっぱいいると思います。かく言うボクも劇場を後にした時はそうでしたから。
あり得なくてバカバカしいんだけど、むっちゃ楽しーっ!!! この「むっちゃ楽しーっ!!!」感が全編にみなぎっていたら夏映画の中ではかなり上位ランクにきてたと思う。それだけに惜しいね、やっぱ。
あと、セリフでしっかりと「インディアン」と言ってるんだから、そこは字幕でもやっぱり「インディアン」にするべきでしょ。 今は「先住民」「ネイティブ・アメリカン」が一般化しているけど、日本でも昔はフツーに「インディアン」を使っていたのだから、そこはヘンに誤魔化さないでよ。
<思ったほど楽しめなかった & 冗長 & 製作中のゴタゴタ & 変人ジョニデ飽きた & 今更『ローン・レンジャー』>が影響しているのか、全米興行では苦戦を強いられ『ジョン・カーター』に続く失敗作と叩かれるハメに。経済評論家は、そもそもジョニデとブラッカイマーに頼りすぎたディズニーの戦略ミスを指摘しているようで・・・・。2億1500万ドル(宣伝費込みだと3億ドル近い)も費やされた大作が全米興収8815万ドル、全世界興収2億4000万ドル足らずの低調な成績で終わりそうで、ディズニーは最終的に2憶ドル近い莫大な損失に青ざめることに。 もはや続編は200%ないでしょうね。
今回の大コケは『パイレーツ・オブ・カリビアン』5作目の製作にも影響が出ていて、プロデューサーのジェリー・ブラッカイマーはファイナルカット権を剥奪され、ディズニーの予算削減はほぼ免れないだろうと業界ではもっぱらのウワサ。
でも『パイレーツ・オブ・カリビアン』みたいなイベント映画は、『生命(いのち)の泉』のような1回観れば十分なグダグダな愚作でも、ディズニーランドに行く感覚で楽しむ人(つまり年に1、2本ぐらいしか映画を観ないような人)がほとんどだろうからフツーにヒットするんじゃね?と思うんですけどね。
ココGOOD! 変人ジョニデ、健在/冒頭の列車アクション/白馬シルバー、大活躍/ウィリアム・フィクトナー/クライマックスの超絶な列車アクションに燃え!/「ウィリアム・テル序曲」に燃え!
ココBOMB! 長すぎ!長すぎ!長すぎ!/編集がヘタなので全体的にチグハグかつテンポ悪すぎ/ギャグがすべりまくり/主人公ローン・レンジャーがあまり魅力的じゃない/バディ感があまりない/ヘレナ・ボナム=カーターの無駄遣い/予告編でネタバレ/「インディアン」を「先住民」と訳した字幕
『ローン・レンジャー』 60点
●満足度料金/1100円
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