面白い映画には愛を捧げ そうでない映画には鉄槌を下す
たいむぽっかんの
ぶっちゃけCINE TALK!!!
●今日のぶっちゃけなシネ言
「ダメな映画やドラマの法則:思わせぶりな演出が多くて、結局何の意味もなくうんざりするパターン」
シネトーク167
『アフター・アース』
AFTER EARTH
監督・製作・脚本:M・ナイト・シャマラン 製作・原案・出演:ウィル・スミス
出演:ジェイデン・スミス/ソフィー・オコネドー/ゾーイ・イザベラ・クラヴィッツ/リンカーン・ルイス/サッシャ・ダーワン/イザベル・ファーマン
2013年米/ソニー・ピクチャーズ/100分/シネマスコープサイズ/ソニー・ピクチャーズ配給(2013年6月21日公開)
●作品解説
ウィル・スミスが原案、製作、出演を兼任し、息子のジェイデン・スミスと再共演を果たしたSFサバイバル。監督はM・ナイト・シャマラン。
西暦3071年。人類が地球を放棄し、惑星「ノヴァ・プライム」に移住していた。プライム軍の総司令官サイファは息子のキタイと共に宇宙遠征中、彼らを乗せた宇宙船がある惑星に不時着。そこは人類が捨て、今や第一危険惑星に指定された地球だった。負傷した父の代わりに救助信号の発信機を見つけるため、100Km先に墜落した宇宙船の船首部分にたった1人で向かうキタイだが、未知なる生物が彼の行く手を阻む。
※ネタバレしてます! ご注意を!
SF映画としての設定やツメが甘々ですなあ~
コレ、色々と言われている珍作SFですけど、面白いほうだとは思いますよ・・・・・・・少なくとも『エアベンダー』よりかは。
SFサバイバルは基本的に好物ジャンルなんだけど、スミス親子映画というだけで鑑賞欲と作品的興味がガクンと落ちちゃいまして、でも愛するシャマラン映画最新作ということで、これはなんとしてでも観ねば!・・・という気持ちがずっとありながら、観たのが公開から3週経った先週というね。 でも、やっぱり大スクリーンで観ておいて良かったデス。50インチのテレビでBDで観てもちっとも面白くないでしょうから、この映画。
「主役よりも脇役が目立ってる映画には出たくないんだよねー」というフザけた理由で『ジャンゴ 繋がれざる者』のオファーを蹴り、もう開き直りともいえるトップスター気取り(実際、スターなんだけどさ)のウィル・スミスが愛息のためなら助演に回ってもいい、というその志は買いたいけど、やっぱり親バカムービーになっちゃってるのは否めませんねえ。
ボクは、大して実力もないのに親の七光りだけで芸能界でヤンチャしてる二世タレントとか大嫌いでして(誰かって? そりゃアイツですよ)、でも、ジェイデン・スミスはウィルの親バカからなんとか離脱しようと努力していると思います。それは『幸せのちから』『ベスト・キッド』を観ても明らかだし、むしろジェイデンにベッタリで子離れできてないウィルに問題があるんですけどね。
彼が原案を思いついたという本作にしても、『ベスト・キッド』でジェイデンがジャッキー・チェンとベタベタしているところを見て嫉妬したから、というかなり不純な動機で作られているかと思うと「なんだかなあ」なんですわ。つまり親バカ映画を作るためだけに、ソニー・ピクチャーズに1億3000万ドルも出させたウィルの狂気に近い暴走にはある意味、感心しますね。
しかもウィル本人がシャマランに監督のご指名をしておきながら、宣伝では彼の名前を一切伏せたまま。予告編でも名前は出てこないし、パンフレットにはシャマランの顔写真1枚すら載ってない徹底ぶり(そこまで邪険にしなくてもさあ)。
ま、これは『エアベンダー』で致命的な失敗を犯し、自らの監督株を紙くずにしてしまったシャマラン監督の最新作!で宣伝しちゃうとコケる恐れがあるし、ならばウィル・スミス主演最新作で売った方がヒットするとスタジオが判断したのは間違ってないんだろうけど、それでも米国内の興収はたった5975万ドルしか稼げず不発。これは子供だまし映画『エアベンダー』の半分も稼げておらず、ここ10年のウィル・スミス映画としては最低の数字。同じ壊滅後の地球を舞台にした類似SF『オブリビオン』が先に公開された影響もあるとはいえ、結局、ウィル・スミス主演のSF大作として宣伝しても、観客は中途半端なSF映画には関心を寄せないということです。
じゃあ、シャマラン映画として見たらどうなのか。
『ハプニング』以前のシャマラン映画ってどんなヘンな映画であれ、常人には理解されにくい珍作でも熱狂的なシャマラーからすれば<ある種の愛着>があり、「シャマラン、またヘンな映画作りやがって。でもキライになれないんだよねえ、コイツ」的な擁護ができたんだけど、さすがに前作の『エアベンダー』は受け入れ難い愚作でした。
今回の『アフター・アース』は、シャマラン映画が苦手だった人からは「別につまんなくはないしフツーに観れたSF」として評価される一方で、シャマラーにはフツーのSFを撮ったことでシャマラン株が下がってしまったという、シャマラン監督ってある意味、カワイソウな人なんです。 ちなみにロッテン・トマトでは『エアベンダー』の6%という記録的な抹殺評価ではないものの、たった11%
という数字は下から2番目の低い評価。
ヘンな映画であっても、シャマラニズムが極端に薄い本作はフツーに面白くないSFとしか映らないし、やっぱりシャマランがイチから考えた話でないとシャマラン映画にある滑稽な面白さは生まれてこない。舞台をフィラデルフィアにして、水が極端に怖いエイリアンが襲ってきて、出たがり屋シャマランが出演して、アッと驚く(もしくは唖然とさせる)とんでもないどんでん返しが待ち受けるオハナシでないとシャマラン映画を観ている気がしないんですわ。
本作での発言権はおそらくスミス・ファミリー(カミさんで共同プロデューサーのジェイダ・ピンケット・スミスも含め)にあるので、シャマランはスミスの原案を脚本にするのにかなり苦労したんじゃないかな? シャマランが自分のカラーを出してしまうと、ウィルから「いや、ここはこうして」と軌道修正させられて、そうとうウップンたまってるはず(←勝手な憶測)。逆に言えば、これまで好き勝手に撮ってきたシャマランのわがままをスミス・ファミリーが矯正したという見方もできるんですけどね。その証拠に、パンフのインタビューで「ボクは次回作の脚本を書き始めたところだけど、ウィルはまだボクの頭の中にいる。彼の声が聞こえてくる」というポジティブにも思えるこの発言の裏には、実は別の意味が込められてるんじゃないか?とすら思えます。
そうは言っても、主役のジェイデンくんはなかなか頑張って力演してます。親が息子に立派な男になってほしいという「期待」を込めて「キタイ」と名付けた・・・・かは知らないけど(監督いわく名前の由来は日本語の「期待」から)、さまざまなサバイバルを経験して<逞しい男>へと成長していく話は基本的に好きです。
ただですね・・・・・サバイバル映画としての出来はどうかと言われたら、これがまた微妙で・・・・・。サバイバル映画の醍醐味であるはずの危機回避シーンが今ひとつ面白くないというか、あんまし盛り上がってくれないんですわ。
ヒヒの大群に追われる → フツーに逃げきる(なんじゃそれ)
毒ヒルに噛まれて顔がシワシワのばあ~になる(←このシワシワのばあ顔は
でした) → 抗毒素プロトコルで助かる(良かったね)
呼吸カプセルが2つ壊れてしまい焦る → たどり着いた宇宙船の尾翼部に予備があって助かる(なんじゃそれ)
スカイダイビング中に怪鳥に襲われる → 巣に運ばれる(なんじゃそれ)
凶暴なトラと対峙 → トラ、真っ逆さまに落下(間抜けすぎ)
通信機が壊れてまたまた焦る → 特にどうすることもなく(なんじゃそれ)
寒くて死んじゃうよ~! → さっきの怪鳥に助けられる(いい加減にしろよ)
ビーコンの救助信号送れず → もっと高いところから信号を送る(なんじゃそれ)
アーサとご対面! → 恐怖心を克服し、盲目でヨロヨロ状態のアーサを一撃で倒す(良かったね)
もっとアイデアや創意工夫してシーンを盛り上げるべきだったのに、見せ場の羅列だけで終わってしまっているのはなんとも残尿感たっぷり。そもそもSFとしての設定とかがすっごいザツなんですヨ。
人類が地球を離れて惑星ノヴァ・プライムで新たな文明を築くために<ユナイテッド・レンジャー><プリムス><サヴァント>という3つの組織が作られたわけだけど、劇中ではそれらが具体的にどう機能しているのかはほとんど描かれず、よく分からない。
キタイがサバイバル用に持っていくカトラスというアイテムには「22種類の武器が内蔵されている」というわりには刃物系の武器ばっかりで、しかも実際に使ったのは2、3種ぐらい。全く頼りないし、ガジェットとしての魅力もない。対アーサの武器がこんなショボイもんでいいのか?
キタイが着るライフスーツにしたって、危険が迫るとスーツの色が変わるだけで、大した防衛機能を備えていないからこれがまた笑える。クソの役にも立ってない。地球人の技術力のなさに心底失望したシーンでもありました。
で、観た人なら誰もがツッコまざるを得ないのは、1000年後の地球が<人類末梢のために進化した惑星>に全く見えないんですよねえ、コレが。
地球が文明を崩壊させて生まれたままの姿に還っただけでしょ。緑がすごい生い茂っているのに、酸素がめっちゃ薄いという環境ものみ込みずらいし(でもって他の生物はビンビンしてるし)、太古の地球の生態系に戻ったのなら、いっそのこと恐竜(に似た巨大生物とか)とかもっと出してくれば画的にも面白くできたと思うんだけど。これだったらまだ風が人類を敵視する『ハプニング』のほうが怖かったし、緊迫感もあったヨ。
気温差が激しくて徐々に凍りついていくシーンでは、『デイ・アフター・トゥモロー』の“台風の目”のように瞬間的に凍死するわけじゃないから、切迫した感じももうひとつ。あそこで怪鳥に助けられてなかったら主人公も明らかにジ・エンドだったはず。
あと、己の恐怖心を克服し、アーサに立ち向かえる<ゴースト>と呼ばれる者がサイファを含めて7人しかいないという設定も大して活かされていないし、そもそも人間の恐怖心を嗅ぎつける怪物アーサの設定もなんか中途半端感が否めない。
この怪物を放った、ノヴァ・プライムの先住民、つまりエイリアン=スカールが最後まで出てこなかったのも心底ガッカリしたし。 そもそも人類自らが地球をダメにしてしまい、惑星ノヴァ・プライムに移住しようとしたら、先住していたスカールが攻撃してきたという設定なんだけど、そりゃスカールからしたら人間の方が凶悪な侵略エイリアンだろ。
つまり、この映画、裏設定はやたらと細かいのに、それが本編ではほとんど描かれていない。パンフレットに詳細な設定が載ってても「は? そんな設定あったっけ?」なんですわ。SF映画としての魅力も欠いちゃってるし、これじゃダメでしょ。ウィル&ジェイデン・スミス親子がテレビを観ながら考えたような設定を、シャマラン監督もそこから大して膨らませようとはせず(膨らませることができなかった?)、そのまま脚本化しただけの浅いオハナシなので、真っ当なSFファンが真剣に観るとバカを見ます。
当初はアラスカ旅行に出かけた親子のサバイバル・ストーリーだったらしいけど、むしろそっちのほうが良かったのでは? 父親が先に亡くなってしまい、食うものがなくて困った息子は死んだ父の肉を口にしてしまう『生きてこそ』タイプの究極のサバイバル映画にするとかね(うげーっ)。
あと、今回のウィル・スミスはずっと宇宙船の操縦席でジェイデンにボソボソと指示を出しているだけでほとんど活躍しない。ていうか、父親役はウィルでないほうがよかったのでは? 彼だと総司令官という偉い役職につくような人物に見えないんですよ、やっぱ。「アンタが総司令官? プッ 」みたいな。 ここはデンゼル・ワシントンあたりに演じさせたほうがまだ作品的にもシマリが出たと思うし、そうすれば「親バカ映画」と評されることもなかったと思う。
息子に独り立ちしてほしい父親の願いとその息子の葛藤と内面的な成長劇を描いた薄口なサバイバルSFとして観たら、これはこれでアリな作品だと思いますけどね。にしても、やっぱりこの映画はウィル・スミスが愛息のために作った親バカ映画であることには違いないけど。
噂によるとウィルは元々『アフター・アース』を3部作にする構想があったようだけど、ま、これほど酷評されて大コケしたなら3部作なんてまず無理でしょう。
これを最後にウィル・スミスは子離れをしてもらって、シャマランは雇われ監督じゃなくて自分の本当に撮りたい作品を撮ってもらいたいもんです。でも、暴走しすぎてハリウッドから干されないように気を付けてね。
↓ところで予告編にあったこのシーンはなかったよね?
ココGOOD! ジェイデン・スミス、力演/怪鳥、快調!/本編の時間が100分
ココBOMB! やっぱり親バカ映画/シャマラン映画らしい部分、あまりなく/ウィル・スミス/危機脱出シーンがあまり盛り上がらない/SFやガジェットの設定がザツでテキトー/裏設定だけはやたらと細かいのに映画とはあまり関係ない
『アフター・アース』 55点
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