面白い映画には愛を捧げ そうでない映画には鉄槌を下す
たいむぽっかんの
ぶっちゃけCINE TALK!!!
●今日のちょい気になることシネ言
「『どうせ1年後にはTVでやってるんでしょ?』と、劇場鑑賞をスルーする邦画が多くなった」
シネトーク156
『オズ はじまりの戦い』
(IMAX3D)
OZ:THE GREAT AND POWERFUL
監督:サム・ライミ 原作:L・フランク・ボーム 音楽:ダニー・エルフマン
出演:ジェームズ・フランコ/ミシェル・ウィリアムズ/レイチェル・ワイズ/ミラ・クニス/ビル・コッブス/トニー・コックス
2013年米/ウォルト・ディズニー/130分/シネマスコープサイズ/3D/ウォルト・ディズニー・ジャパン配給(2013年3月8日公開)
●作品解説
ジュディ・ガーランド主演の名作『オズの魔法使』に登場した<偉大なる魔法使いオズ>が誕生するまでを描いた前日譚をサム・ライミ監督が3Dで映画化。
カンザスの若き奇術師オズはサーカス一座の一員として地方巡業の日々を送っていた。ある日、気球に乗り込んでいたところ嵐に巻き込まれ、美しい<オズの国>に迷い込む。だが、この国は邪悪な魔女に支配されており、彼は予言に残された国を救う偉大なる魔法使いのオズと間違われてしまう。
※ネタバレしてます! ご注意を!
なんだよ、オズってただの女たらしじゃん!
予告編を観た時から「これはIMAXで体験しなくては!」と思い、チケットを買ってたんだけど、ドタバタしてて気づいたらわずか3週間でIMAX上映が終了することになり、上映最終日に駆け込んで観に行ってきました。日本ではあんまりヒットしてないのかしら? ディズニー・ジャパンの発表だと最終的には20億円いくかどうかということなんだけど、さすがに118億円も稼いだ『アリス・イン・ワンダーランド』級の大ヒットを見込んでいなかったにせよ、約6分の1しか稼げなかったのは少々物足りないかも。せめて30億はいってほしかった。ティム・バートン&ジョニデのネームバリューに比べたら、サム・ライミ&ジェームズ・フランコだとまだまだ集客力が弱いということか。『不思議の国のアリス』はOKで、『オズの魔法使い』はダメということはあるまい。
本作を『オズの魔法使い』の続編、後日談だと勘違いしている人が意外に多いようで、知人の女性が「ドロシー、出てこなかったね」とボヤいてました。 いやいや、そりゃ出てきませんて、エピソード0ですから。
ただ、そのへんのプリクエル映画と違うのは、『ヤング・シャーロック ピラミッドの謎』のように、有名原作ものを映画クリエイターが「この話に行きつく前、もしくはこの話の後の展開は恐らくこうなっていただろう」と、想像力、独創力、知恵を振り絞ってオリジナルで作り上げる<リイマジニング映画>だということ。特にディズニーは『アリス』と『オズ』の大ヒットに気を良くし、今後も『シンデレラ』や『美女と野獣』、マレフィセントを主人公にした『眠れる森の美女』のリイマジニング・ビジネスに乗り出している。ユニバーサルの『スノーホワイト』も同様ですな。
しかし、世界中に原作ファンが多くいる名作童話や有名小説の前日談もしくは後日談を、ハリウッドのクリエイターが勝手にイジって映画にするのは実はリスキーなビジネスでもあるわけで・・・。厳しい目をもつ原作ファンを満足させるのは至難の業。世界中で大ヒットした『アリス』にしても、細心の注意を払ってオリジナルをリスペクトしているけど、ファンからは思ったほど支持されておらず、作品評価は決して芳しくない。「ハリウッドの映画人がアリスの世界を台無しにした」とまで叩かれたほど。
では、『オズの魔法使』のプリクエルはどうだったか。
鑑賞前に『オズの魔法使』のチェックは外せないのでBDで久々に観直した。ほんと、何年ぶりだろうか。
ジュディ・ガーランドの美しい歌声とファンタジックな映像世界に酔いしれ、さすが永遠の名作といわれるだけのことはある。
しかし、その名作の裏にはジュディの波乱に満ちた人生があった。
13歳でプロデューサーと肉体関係を持ってドロシー役を得ただの、ポッチャリ体型だった彼女が痩せるために薬物を使用していただの(当時の薬物規制は今ほど厳しくなかった)、ミュージカル・シーンでは覚せい剤でハイになって歌っていただの、今となっては考えられない<黒い逸話>を残した作品としても知られている。
とはいえ、映画に罪はないわけで。やっぱりジュディ・ガーランドは美しく、「Somewhere Over The Rainbow」
は名曲であることには違いない。
第二次大戦前に作られたということを考えると、その驚愕に値する極彩色の世界に当時の観客は魅了されただろうし、今で言う『アバター』級の革新的な映像技術を人々に与えていたのでしょう。いや、それ以上かもしれない。
ただ、改めて観直したら、話として辻褄の合ってない部分が多く、それがまたご愛嬌的に面白い。東の魔女は見せ場が全くなく即死。東の魔女=エヴァノラがグリンダとはりきって戦ってるクライマックスを観ている時でも「でもこの魔女、後でドロシーの家の下敷きになって死んじゃうんだよねえ」とついつい余計なことを思い出して、だんだん笑けてきたり・・・・。
西の魔女も水をぶっかけられただけで溶解死しちゃったし、実はこの魔女姉妹、思ったほど強くなかったりする。恐らく、老化で魔法の力が弱まったんだろう・・・とか、脳内で整合性を取らないと、とてもじゃないがこの2作品は繋がらない。
いかんせん、オズは年を取っても役立たずのボンクラジジイだし。「あなたを元の世界に戻せるのは魔法使いのオズだけよ」とグリンダがドロシーに助言を与えるも、オズのオッサンは気球で1人で帰ってしまうドリフみたいなコントに、子供の時、大笑いした記憶がある。<信じる心>こそが願いを叶えるという教訓はあったにせよ、幼い時からヒネくれてたボクは「なんじゃ、その都合のいい解釈は!」だったのである。
で、「このオズというオッサンは一体何者だったんだ?」と、ずっと引っかかっていたモヤモヤな部分が、『オズ はじまりの戦い』でついに明かされると聞いて、期待するなというほうが無理というもの。
ダメダメ男のオズが良き人間になっておしまい!というハナシは「やっぱりこういう展開にならざるを得ないよね」という観る側の汲み取りがあったとしても、残尿感は否めない印象。確かに楽しい映画ではあるんだけど、その楽しかった部分というのは、オズの活躍ではなくて、むしろ彼の脇を固めるキャラクターの魅力に尽きるんですヨ。ミシェル“グリンダ”ウィリアムズはめっさ美しいし、悪い魔女になったとはいえセオドラは同情の余地ありのキャラだし、オサルのフィンリーと陶器の少女は愛くるしさ満点だったし・・・。
しかし、肝心の主役のオズが意外とムカつかせるキャラで、これがなかなかの困ったちゃん。 この男、女にだらしがなく、エヴァノラ&セオドラをまさかの姉妹丼で食っちゃう最低な野郎でして。彼から愛を教えられた挙句、ポイされちゃったセオドラは姉のエヴァノラにそそのかされて、醜い緑の魔女に変身。コレ、女性からしたら「姉妹を食ってるこんなヤリ○ン、最低!」てことになりませんか? もちろんディズニー映画なのでそんな濡れ場はないけど、でもやっぱりヤッてるよな・・・・・。
さらに、マンチキンやグリンダがせっかく歌い踊りだそう・・・とした瞬間、オズが「歌はいらね!」と遮っちゃうところも、オリジナルのファンの心象は最悪だったようだ。
そんな男がこの姉妹に対して何のフォローもせず、オズの国に平和を取り戻して<偉大な魔法使い>呼ばわりされても、「これで<偉大な魔法使い>と言っちゃっていいのか?」という違和感が拭えず、ぶっちゃけ、三流ペテン師から救世主になったという感じがあまりしないんですわ。それって話としてどーよ?
現実世界で3人(恋人、相棒、車いすの少女)をほったらかした問題は、オズの国ではグリンダ、フィンリー、陶器の少女に“尽くす”ことができ、「ボクは頑張りました! 成長しました!」と言われても、結局、現実世界はそのままなので後味の悪さも大して解消されてないままなんですヨ。
あと、ファンには申し訳ないけど、ジェイムズ・フランコのニヤケ顔がどうも苦手なんです。IMAXの巨大スクリーンで見るニヤケ顔じゃないよ、アレはどう見ても。
それとフランコだと、リーダーシップを発揮する人物、みんなを引っ張っていく人物に見えないんですヨ。ゆえに主人公の魅力も乏しく、あまり応援したいという気持ちに駆られないし、共感しずらいというね。う~ん、コレはミスキャストだな、やっぱ。
スマウグちゃんが潜んでそうな宝の山を見て「イヤッホー!!!」と喜んでる場合ではないよ、ったく。
そうは言っても、オズは基本的にペテン師なので「じゃあ、ペテンでいっちょカマしてやるか!」と、カカシ、映写機、花火を駆使して魔女どもをビビらせるクライマックス戦では童心に返ることができ、見どころもたっぷり。あの場面は映写機=映画という素晴らしい発明に対するサム・ライミなりのオマージュなんでしょう。「本来、映画というものは人々を驚かす“魔法の箱”なり!」というライミの映画愛をしかと受け止めましたヨ。
しかし、「魔法の国なのに花火ごときにビックリしてんのかよ。オズの国も大したことないよね」と、ちょっと冷めてる自分もいたり。
『オズの魔法使』に出てきたグリンダは本当に「ちちんぷいぷい~」とか言いそうな、あまりにも<潔癖無垢な良い魔女>すぎてキャラ的な面白さがなかったけど、本作ではペテン師のオズを色々とフォローする人間っぽい部分を加味し、キャラとしての魅力もUP。オズとの掛け合いはちょっと夫婦漫才を思わせたり。
しかし、ミシェル・ウィリアムズってこれまでそんなに美人だとは思わなかったけど、ここでの彼女は超絶的に美しく、ちょっとヤバイ。
いつも以上にむっくりしたミシェルのパンダ顔が拝めて、個人的には デス!(ボクはパンダ顔
が好きなのよ
)
ミシェルってこれまで、人生に疲れた主婦だとか、欲求不満だらけのヒロインだとか、どこでもセックスしちゃう女だとか、現実的でシンドイ役が多かっただけに、こういうお姫様な彼女が見られると嬉しくなりますな。7歳の娘のために出演したというし(確かに過去の出演作は幼い娘に見せられるようなものではなかった)、こういうエンタメ大作にもどんどん出てもらいたいデス。
でっかいシャボン玉に乗って空中移動するシーン
は最高にファンタスティックで、ラストでオズに「善良な心は最初からあなたにあったのよ」と告げる場面では、オリジナル版のテーマをリスペクトしていて、ちょっとニンマリ。
『オズの魔法使』では顔すら見せなかった一番のワル、東の魔女=エヴァノラは、ルビーの靴とシマシマの靴下を履いてなかったので、初めは気づかなかった。しかし、必須アイテムのルビーの靴ぐらいは出してほしかったなあ。金銀財宝の山の中にひょっこり隠れてるとか、それぐらいのサービス精神はあってもよかろうに(リメイク版『タイタンの戦い』でブーボがさりげなく出てきたように)。
しかし、レイチェル・ワイズは悪女役がお似合いよね。容赦ない電撃ビリビリ攻撃では、あんたもシスの血を受け継いでいるのかとか思ったり。『SW』新作ではぜひ女シスを演じてもらいたいと思ったですよ、ハイ。
オズに弄ばれたセオドラが緑の魔女になってしまう展開は意外だった。どう見てもグリーン・ゴブリン
にしか見えないのはご愛嬌だが、本作では最も同情すべき可哀そうなキャラ。しかも、セオドラってそんなに悪い魔女じゃないのに。そんな純真で世間知らずな彼女をヤリ○ンのオズがおイタして、ワル魔女化させちゃったのだ。オルゴールを贈られ、ダンスに誘われ、そしてキスをされ・・・・。この程度で弄んだっていうか?と、全国のヤリ○ンどもはそう思うかもしれないが、オズの国ではこれだけで十二分に弄んだことになるのだ。
救世主であるはずのオズがこの国にやってきたことで、逆に緑の魔女が誕生したという本末転倒なこのハナシ、おかしくないか? しまいにはオズに「いいコになったら戻っておいで」と傷口に塩を塗るようなこと言われ、彼女は「ざけんなヨ、バーロー! オメーのせいでこうなったんだろが、ゴルァァァァ~!!!!」と飛び去っていきます。究極のKY不貞野郎のせいで彼女の人生はめちゃくちゃにされたのです。これはもう子供向きのハナシじゃないですな。
とりわけ評判が良かったのが陶器の少女。むっちゃ愛らしかった! ずっとメソメソしてたのに、オズが「しゃーないな、一緒に来る?」と言った途端、「よっしゃ! 魔女をブッ殺しに行こうぜ!」と態度を豹変させるとことか、もう最高。ぜひ彼女のスピンオフ映画を作っていただきたい。
『オズの魔法使』と同様、オズの世界に入るとモノクロからカラーになる演出は今回も健在。さらにスタンダード・サイズからワイドスクリーンに、モノラルからサラウンドに、3D効果もオズの世界から強くなっていき、なかなかニクイ演出で魅せてくれ、「オズに来たー!」という高揚感がしっかり味わえます。この現実世界 → 壮麗なオズの世界へと変わっていく演出はやっぱり大スクリーンで観たほうがいいし、IMAXで体感した方がより効果的(もう終わっちゃったけど)。どちらかというと『オズの魔法使』の扉を開けたら極彩色の世界が広がっていたという見せ方のほうが好きだけど、本作の演出もステキでした。
話としては、『アリス・イン・ワンダーランド』よりかは楽しめた、という感じだけど、絵本チックなファンタジー世界のサプライズ感は『アリス』で一度体験しているので、正直、アレ以上のものが得られなかったのは少々残念。
しかし3D効果は技術の進歩もあり、『アリス』以上のクオリティに仕上がっていて、最初に出てくる妖精(予告編で観たやつとはちょっと違ってたけど)や、森林や花の自然の奥行き感が素晴らしく、オズの世界に観客を誘うイマジネーション3Dは十分合格な出来。
演出としては、もっとライミっぽいイビツな面白さを期待してたんだけど、意外と真っ当なファンタジーになってたのはいささか物足りなかった。『スパイダーマン』シリーズにしても、テンションやテンポをわざと崩し、時々、大味な演出になるライミっぽいイビツ感があってそれも楽しかったけど、今回はそれがない。やっぱりディズニーから「子供連れの親が観に来る映画だから余計なことはしないように」とクギを刺されたのかな? そういう意味では、まだ『アリス』のほうがティム・バートンの作家性が滲み出ていたように思う。
しかし今回、何が嬉しかったかって、音楽をダニー・エルフマンが手掛けてくれたこと。 というのも、ライミとは『ダークマン』『シンプル・プラン』『スパイダーマン1、2』で仕事をしていたが、『スパイダーマン2』で方向性のすれ違いから、「サムとはもう仕事しない!」と決別。しかし今作で関係を修復し、再びライミ映画に戻って来てくれたのだ(詳しくはパンフレット参照)。エルフマンも「お世辞じゃないけどここ数年で一番楽しい仕事だった」とご機嫌で、楽しいファンタジック・スコアが本編を盛り上げてくれる。
サントラ、買っちゃいましたヨ。
北米興収2億2000万ドル、世界興収4億7230万ドルのディズニーとしては合格ラインの大ヒットとなったけど、期待したわりには消化不良な部分もあったのも否めず、オズが<偉大なる魔法使い>になる『オズの魔法使』に繋げるためには、あと2本ぐらい続編を作らないとダメだろ、と思ってたら、案の定、続編製作が決定したんだそうな。メインキャストは続編出演の契約にサイン済みらしいが、ライミは「本作で終わらせるつもりだったから続編には興味ないよーだ!」ということなので、別の監督にメガホンが渡る可能性が高い。
ところでディズニーは、ドロシーが再びオズの国に向かう非公式の続編的映画『オズ』 (Return To OZ)を85年に公開しているが、なぜかDVDになっていない。ファミリー映画なのに結構ダークな作りになっていて、昔ビデオで観て結構楽しかった記憶があるので、ディズニーさん、ぜひBD化を!
ココGOOD! M・ウィリアムズがめっさ美しい/R・ワイズの悪女感/陶器の少女がめっさキュート/オズの国に入り込むシーンの変化演出/オズのファンタスティックな世界観は楽しい/クライマックスのペテン大仕掛けシーンは見どころ/3D効果あり/ダニー・エルフマン再登板
ココBOMB! 主人公オズの魅力が乏しい。ゆえにあまり共感できず/ストーリー展開に若干の違和感、残尿感あり/J・フランコはミスキャストかも/ライミ監督のイビツな演出がもっと欲しかった
『オズ はじまりの戦い』 65点
●満足度料金/1300円(IMAX)
100点・・・・・・・・映画史に残る名作決定!! 殿堂入り!!!
90~95点・・・・・文句なしの傑作! 劇場で観るべきです!
80~85点・・・・・評価高し! 映画料金以上の価値はあります!
70~75点・・・・・面白い! オススメの秀作&良作!
60~65点・・・・・まあ、人によっては楽しめるかもね
50~55点・・・・・色々と物足りない凡作。ちょっとキツイかも
40~45点・・・・・アクビが止まらない駄作
25~35点・・・・・これで金を取るのは犯罪的なチョー駄作
15~20点・・・・・ボウリングしてたほうが100倍楽しいクソ映画
0~10点・・・・・・時間返してくれ!
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